ぎょーむ日誌 2001-10-14

2001 年 10 月 14 日 (日)

• まだ 13 日 (土) である． 2205 自宅発． 近くのローソンで電気代支払う． 1989 円． 2220 特急に乗って京急平和島発． 2230 JR 品川着． 切符買う． 長野県の茅野まで乗車券 3260 円． 新宿からの急行アルプス 1050 円． 2238 山手線に乗って同発． 2255 JR 新宿着． 6 番ホーム． 土曜日夜だというのに各行列に 2-3 人．
• 2330 急行アルプスに乗り込む． 乗車率 4 割ぐらいか? 2350 JR 新宿発． まもなく 14 日 (日) になる． 座席ふたりぶん使って寝る．
• 0300 起床． JR 茅野駅着． 17 分間停車なので急いで下車しなくてもよい． どうやらこの駅の待合室は終夜開放みたいだけど 寝るのに適した場所がない． 新聞紙もってくるべきだった．
• 天気がよいので明朝に乗るバスのバス停で露営． かなり寒いので エアマットをベンチ上にのべ寝袋にもぐり込む． 満天の星をながめてから寝る．
• 0540 起床． 払暁とともに街路樹樹冠内でさわぎ始めた スズメの大群に起こされる． まもなくバスが来るので出発準備．
• 0600 諏訪バスにのって JR 茅野駅発． 0645 ピラタス横岳ロープウェイ 山麓駅着． 標高 1771m． 始発は 0820 なのでロープウェイ横 (すなわちスキー場横) を歩いて登ることにする． 0710 駐車場横の登山口発．
• ちょっとした体ならし・高所順応のつもりだったんだが …… でだしの 10 分でいきなりばてる． うう， 運動不足． 荷物は 10Kg ちょいぐらいなんだが． 幸運なことにそこからはスキー場横の緩傾斜が続く．

[北八ヶ岳の Abies] なるほどこれが …… さてさて， Abies PipeTree と比べてどうだろう …… うん， やっぱり実物のほうが葉群の密度が高い． この連中は計算速度を気にしなくていいからなぁ． えーい， 腹がたつ …… と空気がうすくなると腹を立てやすくなるのである．

ぜいぜい言いながら 0800 ロープウェイ山頂駅着． 標高 2227m．
• 都立大調査隊到着まで 2 時間ほど時間あるはずなので， そのすきに横岳登頂をもくろむ． ただし体力の衰弱は身にしみて理解できたので， 山頂駅待合室にザックはおいて， デイパックに必要なものだけつめてもっていく． 0805 山頂駅発．
• ここ山頂駅は「山頂」を自称してるけどピークでもなんでもなくて …… 北横岳-縞枯山のあいだのコル (鞍部) なのである． コル平坦部をぬけて北横岳に直登するルートをたどる． 0840 北横岳ヒュッテ通過． 荷物が軽いとさすがにバテてない． 0845 2475m 三角点ピーク通過． 0848 北横岳山頂． 標高 2480m．
• 八ヶ岳には横岳というのがふたつあって， こちらのほうは北横岳と呼ばれている． 展望よし． 私は八ヶ岳の山に登るのはまったく初めてなんだが …… 晴れていれば北アルプス-中央アルプス-南アルプスほか (あまり詳しくないんだけど) 浅間山だの妙高だのいろいろと見ることができる． 南八ヶ岳であればさらに富士山なんかもよく見えるだろう． 北八ヶ岳からは見えんけど．

[蓼科山と北アルプス] 例によって私のへぼ撮影技量 & 安物でぢかめの 組み合わせでは何が写ってるのかよくわからぬ 画像ばかりになるんだが …… 北八ヶ岳の最高峰である蓼科山と北アルプスである． この朝は白馬岳から乗鞍岳にいたるまで全部見えた．

• 0900 山頂発． 駅にもどろうとするも …… すでにロープウェイが稼働しており， 下からはウンカのごとく団体登山客がはいあがってくるので， しばしば登山路横に退避をよぎなくされる． いうところの中高年登山． しかしこの旗をかかげむれをなす， ってのはいかにもヘンだよ． これだから関東に近い山は …… こんどからヒトの多い時期・山域は注意深く避けねば， と決意しつつ 0940 ロープウェイ山頂駅にもどる．
• 1000 都立大調査隊の皆様と合流． すでに荷物は縞枯山荘においてきたとのこと． 今回のメンバーは可知さん・加賀屋さん・谷さん・杉阪さんである (すでに縞枯山北斜面で調査してた小澤さんとあとから山荘で合流)．
• まずは毎木調査地に． 山頂駅のあるコルから南には縞枯山・茶臼山と稜線がつづき， これは八ヶ岳山地を南北にわかつ麦草峠に至る． この麦草峠と現在地を直接にむすぶルート， つまりピークをまいてほぼ等高線沿いに 南斜面を横切る登山道がある． この道ぞいに調査地がある．
• 整備された木道ぞいを 10 分ばかり歩く． ところどころにササ原あり． なんでも中部日本の山林は 1959 年の 伊勢湾台風 ですさまじく撹乱されちゃったそうで (べつの山だけど こういう かんぢ)， 縞枯山の斜面でも多くの林冠木が倒れて一斉更新状態が 始まったそうだ． ただし場所によってはササが素早く占居しちゃって 樹木の入り込めない場所になってしまってる (数十年あるいは百年以上の後のササの一斉枯死期が到来する， その日まで)， とのこと．
• はしごプロット着． この名前は 40 年程まえに調査中のできごとに由来するそうで …… 一晩残置しておいたハシゴが盗まれたから， というもの． 部外者にはわからん名前ですなぁ …… 道の上下にあり， それぞれ 2m コドラートが 16 コ， だったと思う． 樹木の大半はシラビソ・オオシラビソ …… すわなち Abies のたぐいである．
• 院生 3 人は林冠木の樹高と高さ生長を測定し， 私と可知さんは競争に敗退してジリ貧状態にある 「傘型樹冠」をもつ個体の高さを測定する． 高さ 1-2m ぐらい． Abies PipeTree でいうところの Vertical な末端 (つまり主幹の一番上) が失われた個体も多々あり． PipeTree 的な解釈だと， 個体全体が被陰されると頂芽優先を失われる計算になって， 横方向に資源を奪われる， というスジ書きなんだが ……
• 昼飯いただいて， しばらくしたら低いシラビソ・オオシラビソの測定は終了． 可知さんと次の調査地に先に移る． トラヴァース道をさらに麦草峠のほうに進んで 五辻と呼ばれるところから廃道を逆方向にたどる． ここからは縞枯山-茶臼山間の 縞枯れ現象 がよく見える．
• はしごプロットは縞枯山斜面であり， こちら五辻プロットは茶臼山のすそで高度が相対的に低い． ここもまた「はしご」と同じく伊勢湾台風→一斉更新という 経緯をたどったんだけど， 環境がマシなので林分の生長が速いとかで …… そのためかどうか 「傘型樹冠」もつような貧弱な連中はすでに一掃された後なのか， その姿をあまり見ない． プロット内のコドラート数も少なくすぐに終ってしまう．
• しばらく待っても林冠木高さ測定班があらわれないので， もとのはしごプロットに戻ると， 谷さんと加賀屋さんのふたりで 高さ 5m をこす樹木たちを測定されていた． 明日の「ぎょーむ日誌」に書くけど， この作業は人数×時間を必要とするのである． 小柄な加賀屋さんが木登りの才能を発揮してそれを補っている．
• もうひとりの院生・杉阪さんは 14 時すぎに単身で主稜線に上がってそこから 縞枯斜面をくだりつつ全天写真の撮影にでかけた， とのこと． この仕事もまた時間かかるばかりでなく， 空模様に大きく影響されてしまう． 今日は快晴でまったく素晴しい天気なんだけれど， 全天写真撮影者はかくのごとき好天をひどく憎むのである． この観測に最適なのは直射日光のささぬ曇天状態であるからだ …… 果してどうなるのか．
• 「はしご」上下の全個体の測定が終ったので今日の毎木調査はここまで． 時刻は 1630． 明日は五辻の林冠木の高さを測定するばかりである．
• 途中でお茶をわかしたりして飲んだりしながら， ゆるゆると縞枯山荘にむかう． 今晩の宿泊地であり， 縞枯山近辺の調査基地である． 1650 山荘着．

[縞枯山荘] 雨池山-縞枯山のコルに位置する． 冬はスキー登山の客が訪れるので 気合の通年営業． 電力は風力発電+太陽光発電． ふつーの山小屋につきものの 内燃機関発電機がないために極めて静粛である．

• 九大山岳部時代はテント泊ばかりだったし， 大雪山系では無人小屋ばかりだったので， メシつき・フトンつきの小屋泊まりは始めてなんだよね …… なんと宿泊する部屋は畳じきである．
• 日没までしばらく時間あるので， 小屋の裏山である雨池山に登ってみる． りある Abies たちとはもはや和解の境地にあり， 計算負担の高いパラメーターセットをもつ樹木たちをみても 「うむ，そうくるか」 と勝負を楽しむ間柄となった． 15 分ほどかけて登った山頂から， シラビソ・オオシラビソに包囲された 縞枯山荘周辺の地形を見おろし， 遠く乗鞍岳のむこうに沈みゆく夕陽を眺めてから撤収． うす暗くなりつつある中を小屋にむかっていると キツネに出くわしたり．
• 山荘には縞枯山北斜面 (こちらは縞枯れていない) の調査を終えた 小澤さん も戻っておられた． 林床に生きる オサバグサ なる可憐な草本の研究者 …… であるこの女性の驚くべきもうひとつの相貌 …… 彼女の手になる 都立大植物生態のペイジ や 縞枯山調査地のペイジ を見て何か気づかないだろうか． 「ああ，見やすくてカッコいいレイアウト」 「あれれ? このあたりの URL は」 「ということはこのペイジのソースは」 「こ，この埋め込まれた vb script は」 …… そう， 小澤さんは Micro$oft な II$ のサーヴァーサイド実行の スクラッチプログラミングですら易々とこなす (さらに Perl も Java もできてしまう) 練達の web 技能者なのである．
• とっくに日は暮れたのに， 南斜面に撮影にいった杉阪さんが戻ってこない， と皆で危惧してたら …… 1800 の食事時刻の直前に無事に帰還． この「最悪な」快晴のもとにあっても 薄暮時なんかにかなりの撮影に成功したとのこと．
• 全宿泊客十余人が一同に会して晩飯． 標高 2250m とは思えぬ豪勢な内容であった． 食後は大コタツに移ってあれこれ雑談． このコタツは火のついた木炭で温める機構のものだ． 電灯ではなくオイルランプ．
• 満天の星空のもとで歯みがきしてから 2100 すぎに就寝． きわめて快適．
• 今日の食卓
  • 朝 (0550): 昨晩， 自宅近くのローソンで買ったあんぱん． 自販機で買ったミルク紅茶． JR 茅野駅前のバス停ベンチにて．
  • 昼 (1130): 「はしご」調査地で弁当いただく． えーと， 鷄飯だったかな．
  • 晩 (1800): 縞枯山荘の夕食． 飯． 味噌汁． レンコン・コンニャクなどの煮物小鉢． ハンバーグとポテトサラダ …… 「山小屋の飯」はこれが初体験なのだけど， このような豪勢なモノだったとは …… でもこの山荘は特別なんだろうなぁ．