ぎょーむ日誌 2006-11-08
2006 年 11 月 08 日 (水)
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0700 起床.
ねむい.
朝飯.
コーヒー.
0850 自宅発.
曇.
0905 研究室着.
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昨日まで放置してたメイルかき & ネット雑用,
など.
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マレイシア続報.
なぜたくさんの小径木が死んでいたかという理由が判明.
甲山さんが「1999 年のデータ」と言ってたファイルはじつは
1995 年に観測されたものだった!
そりゃ 11 年 (以上) もたてば小個体ならそれなりに死ぬでしょうよ
……
教訓: Pasoh にかぎらず他人から渡された毎木データは
「いつどのように取られたものか」
をしつこくしつこく確認すること.
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粕谷さんから多変量解析のアヤしさについて考察せよ,
という宿題がでてたので,
そのあたりを考えてみる
……
というか PCA だの CA だのそもそも計算方法がアタマから
脱落していたのでそのあたりから復習.
この計算じたいはどちらも単なる Lagrange の
未定乗数法
で何も難しくはない.
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私が提出したごくごくいいかげんな多変量雑談.
はい,固有ヴェクトルの成分の確率分布などはあまり考えられていませんね.
同じ研究室の露崎さん (後述する植生学で *CA のたぐいをよく使っている)
から固有値の寄予率などは「検定」する (おそらく bootstrap 的な手法でしょ
う) ことが近ごろでは求められている,といったハナシをきいたことがありま
す.固有ヴェクトルの成分のばらつきまでは調べてないような気がしますね.
...
「もともと」はピアソン (親父) あたりが始めた多変量正規分布の分散・共分
散行列の推定が起源でしょうから(安藤洋美「多変量解析の歴史」とか),母集
団みたいなものは考えていたと思います.もしデータが多変量正規分布からの
ランダムサンプルであり,そこから主成分分析 (PCA) によって得られた固有
値・固有ヴェクトルのあつまり (行列) をひねくれば分散・共分散行列になお
すことができるだろうと思うのですが,そのやりかたはよくわかりません.
Lagrange の未定乗数法をもちいる現在の *CA のたぐいの起源は 1950 年代ぐ
らいではないかと思うのですが……まあ,こういう手法が開発された理由は,
分散・共分散行列を推定してながめてもよくわからないので,固有値・固有ヴェ
クトルを使って「主成分」を示すほうがわかりやすい,と考えられたためなの
でしょう.
勝手な憶測をつづけますと,計算方法から多変量正規分布という概念がぬけて
しまった時点で,粕谷さん指摘されるように「母集団を想定しない」不思議な
統計学的手法になったのでしょうかね.
あるいは三中さんが以前に言われてたように,このへんは情報圧縮 (でしたか?)
みたいな技術として使われてる,と.
最後に「例」の報告ですが,粕谷さんが探しておられる「ヘンな例」の範囲か
らも逸脱してるような気がするのですが,「植生学」は *CA な手法にかなり
依存している分野としてあげることができます.これはいろいろな場所で,わ
くをとってそのわくの中の植物種ごとの「植被度」なる「割合みたいな量」を
要素とするヴェクトルをつくり,それを *CA します.
おもしろいのは,きわめて植生学的には理想的な (本来なら「第一主成分」だ
けで完璧に説明できるはずの) データであっても,PCA,CCA などはありもし
ない「第二主成分」が推定される,ということです.図としては
http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~kubo/log/2004/1201.html#vegan
あたりに示しています.これは「arch 現象」とか呼ばれてて植生学のヒトた
ちのあいだでもよく知られています (そこで DCA なる想像を絶した奇怪な手
法が「発明」されてしまうのですが,それはまた別のハナシ).
R
の VGAM
package などはこのあたりの複雑怪奇さにイヤけがさし,
それに対抗するべく
「多変量解析の統計モデル化」
をねらったものだと思うんだけど
(先日の lvplot()
作図例も library(VGAM)
)
……
じつは私はこのあたりはまだまだ不勉強な状態だ.
さてさて,
これから生態学まわりでの多変量解析はどうなっていくのであろうか.
てなこと書いてたら,
私が植生学的多変量解析をアヤしげよばわりしていると
(おそらく霊感か何かで)
察知した院生が,
私は自分の植生データを DCA で解析するつもりです,
といきなり宣言していった
……
まあ,
今日はダメでも
「いつかは」
このあたりきちんとした統計モデル化の勉強をやろう.
要するに「相互に独立ではないかもしれぬ成分たち」を要素とする vector の
「ぐるーぷ化」だの時間変化のモデリングだろう?
階層ベイズモデルでけりがつく問題だ.
私が目次 mail 配信うけとってる数少ないぢゃーなるのひとつ
Environmental and Ecological Statistics
(目次を mail で受けとらないとその存在すら忘れてしまいそうなので),
今回はちょっと役にたちそうな情報もあり.
A spatial zero-inflated poisson regression model for oak regeneration
Author(s): Stephen L. Rathbun, Songlin Fei
Page: 409 - 426
DOI URL: http://dx.doi.org/10.1007/s10651-006-0020-x
修論とかの下うけ計算で使うことになりそう,
と思ってダウンロードしてみたら
……
やはりというか,
階層ベイズモデル + Gaussian Random Field
(これを spatial probit model として
「適・不適」隠れ値生成に使っている!)
なモデルの MCMC 計算 + EM アルゴリズムあわせわざ推定,
でした.
ということで,
皆さんあきらめてこのあたりも勉強されてください.
昼飯.
昼飯後はなぜか社会性昆虫のあれこれなどダウンロードして勉強.
1500 よりここ A 棟 5F 509 室で
社会性昆虫勉強会
に参加.
[社会性昆虫勉強会(社昆勉)札幌大会]
日時:2006年11月8日(水)15時より(懇親会19時〜)
会場:北海道大学・大学院地球環境科学研究院 A509室
演題:
前川清人(富山大・理)
「シロアリのカースト分化と器官形成に関する研究」
柴尾晴信(東大・総合文化)
「社会性アブラムシにおける階級分化と社会制御」
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主催者の
三浦さんの楽しげなごあいさつと,
その師匠である松本さんによる
(いままでは東京で開かれてた)
社昆勉 30 年間の略歴が紹介されたあと
(桑原万寿太郎,
なんてひさしぶりに聞いた),
本日の講演はじまる.
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で,
3 時間ちかくにわたって
前川さん
と
柴尾さん
のたいへん内容もりだくさんのハナシがあったわけだが
……
[びっしりメモ]
いやいや,
ちゃんと内容はフォローしてました,
と
……
前川さんの研究はシロアリのワーカー・ソルジャーへの分化によって
何が生じるのか (個体内),
どのようにそうなるか (個体間?).
柴尾さんは真社会性アブラムシの分化誘導抑制 (個体間相互作用)
- 齢差分業 (「お年より」に危険な仕事を!) - 化学信号への齢差応答,
といったハナシの流れ.
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お二人のハナシや一連の質疑応答からはちょっとハズれるかもしれぬが,
拝聴してるうちにいくつか励起されてしまった,
例の東さん科研がらみのしみゅれいしょん研究だか何だかと関連しそうな
妄想みたいなものを整理してみよう,
と
……
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sibling 相互作用.
シロアリでもアブラムシでも
「兵隊は (幼虫・ワーカーの兵隊誘導による) 兵隊増産を抑制する」
sibling 相互作用は普遍的というか,
「まあそうだろな」的に見られる.
では兵隊誘導はどういった個体間相互作用によるものか?
これも sibling 間相互作用だとするとすっきりするので,
そう考えたいわけだが
……
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親による誘導,
というハナシもあるようで.
親が「こいつは兵隊,こいつはワーカー」
とか識別できてるのかしらん?
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さらに,
教科書的な表現的多型ばかりがすべてを決めてるわけでもなく,
そもそも「何に分化するか」は遺伝学的背景も関与するらしい,
といった指摘があったり.
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シロアリコロニー創設実験をやると,
創設期には兵隊は一匹だけ出てとりあえずそれ以上は増産されない.
あとで前川さんにお尋ねすると,
とりあえず一匹いればコロニー防衛
(シロアリの場合は他コロニーのシロアリ排除が重要だそうで)
はできるのでしょう,
と.
そるじゃーってワーカーよりも格段に「戦闘能力」が高いのか?
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そるじゃーとわーかー.
形態の違いに目がいってしまうけど,
じつはその「行動様式・習性」がおおいにちがうのだ,
というご指摘もあったな.
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真社会性昆虫にとって「コロニーそうじ」
はたいへん重要なお仕事
(私はこれと「(放浪性アリの) 分巣しやすさ」
みたいなことが関係あるんでは,
という妄想にとりつかれている).
アブラムシは若い兵隊がそうじ担当で,
そのアタマに「ほうき」状構造があるとか.
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そうじといえば,
コロニー内のアブラムシ死体は死後一日後ぐらいから
脂肪酸 (死亡酸とメモには誤記してしまった; リノール酸)
が「わいて」くるので,
それを識別してコロニー外に捨てられる.
シロアリだと (オレイン酸がわいて?) 死体は食われてしまうとか.
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カースト認識も体表ワックスでできるものらしい.
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コロニー内組成は個体間相互作用によって状況応答的に柔軟に変化する,
は誰にとっても受け入れやすいハナシになりつつあるようで
……
しかし個体の生理状態 (とその履歴)
とかは反映されないのかしらん?
たとえば母親の胎内にいるときや幼少時に飢餓状態を体験すると
エサ集め担当に分化しやすい,
とか.
うーむ
……
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ところで,
この勉強会に参加したもひとつの理由は
……
「社会性昆虫を研究するヒトたち」
それ自体の観察だ.
まあ,
東さんのアヤしげな科研ぷろぢぇくとにまきこまれている以上,
このヒトたちを「ほほー」と言わせる計算 (計算?!)
を何かやってみせねばならぬわけで
……
といった「敵状」偵察ですね.
しかし誰も「計算」なんぞは必要としてないようにも見えるな
……
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1830 ごろ終了.
いやー,
つかれました.
そしてまた熱帯林メイルとか
……
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2015 研究室発.
2030 帰宅.
体重 72.2kg.
晩飯.
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[今日の運動]
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いかん,
積雪までの貴重な時間がうんどう不足の日々のうちに
……
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[今日の食卓]
- 朝 (0830):
米麦 0.4 合.
チンゲンサイ・ハクサイ・豆腐のカレー.
- 昼 (1330):
研究室お茶部屋.
食パン.
- 晩 (2130):
米麦 0.7 合.
チンゲンサイ・ハクサイ・豆腐のカレー.