ぎょーむ日誌 2006-06-16

2006 年 06 月 16 日 (金)

• 0800 起床． ねむい． 朝飯． コーヒー． 0920 自宅発． 雨． 0935 研究室着．
• アカマツ論文かきなおしとはまったく関係なく， AIC の赤池さん interview 記事

  Findley, DF and Parzen, E. 1995. A conversation with Hirotugu Akaike. Statistical Science 10: 104-117.

  を (wikipedia でみつけたので) 読んでしまった． 計算のハナシだけでなく， 雑談的な展開もあっておもしろい．
• 昨年つまり 2005 年の 2/16 に 苫小牧の平尾君から

  Ellison, Aaron M. (2004) Bayesian inference in ecology. Ecology Letters 7 (6), 509-520. (abstract)

  とゆー短い総説論文あること教えていただき， そのときにこれを引用している (やはり総説の) 論文である

  Clark, James S. (2005) Why environmental scientists are becoming Bayesians. Ecology Letters 8 (1), 2-14. (abstract)

  に気づいた． Ellison (2004) のほうは Bayes とは何かといったやや哲学的なぎろんと， 具体的な計算例をもちいた最尤推定 (非 Bayes) とべいづな推定の比較であった．
• いっぽう， Clark (2005) のほうは何だかややこしい (彼の好む) 階層性のめんどうな Bayes モデルの紹介だと思っていて， ``Why environmental scientists are becoming Bayesians'' なるらぢかるな論文名との関連はいまいちわからなかった．
• その後はアタマの中がだんだんべいぢあんに染まってきたので， その二ヶ月ほどあとの 4 月末 ごろには， (特にそのときに重視していた) 「空間統計学における MCMC 計算の利用」 と hierarchical Bayesian modelling の関係らしきものを「発見」している． すると次第に (ぢりぢりとではあるが) 下のような図を見ても理解できるようになるようになってきたわけだ (下の図は Clark (2005) の Figure 1)． 昨年 4 月末あたりのぎょーむ日誌で「カクレ状態」とよんでるのは， 下の図でいうところの process の層にあたる．

• 蛇足ながら「発見」なる表現はどういう状況なのかというと …… 2 月の時点で Clark (2005) を読んで理解できていれば， そのときに
  • process 層の導入 (process 変数の prior の導入)
  • MCMC 計算
  • 知りたいパラメーターの事後分布の推定
  というナガレがわかったはずなんだけど， そのときの私には文面ながめても理解できなかったので 「これは 階層ベイズモデルに関するよくある紹介のひとつで， (そのときに検討していた) 空間相関の推定とかには役にたたない」 とか考えたんだろうね． で， 自分でうだうだと考えて上のような関係を「発見」するのに二ヶ月ついやした， と． いやはや．
• さらにこの 2005 年 2 月より 50 日ほど前の 2004 年末 に， すでにこれまた平尾君から教えられて R の library(geoRglm) とか generalized linear spatial model (GLSM) でべいぢあんに空間統計まわりの問題が解けるらしい， と知っていたわけだが …… まあ， なんかそこから翌年の半年ぐらいは (つまり 4 月末以降もしばらくは)， 空間相関うんぬんを推定する問題に関して， なぜかしら
  1. Bayes 推定は使いものにならないだろう
  2. MCMC 計算を空間統計の最尤推定の道具にする工夫が必要
  という思考のわくぐみからぬけられなかったわけだ． 1. はまちがった憶測で， 2. に関しては (現在では) どうすれば良いのかは理解できているけれど， 面倒が多いわりには べいぢあんな定式化より特によい結果が得られるわけでもなさそう， というかんぢ．
• で， その後も Clark (2005) を何度かながめたんだけど， そのたびに図や数式や具体例が 「何をあらわしているか」 が自分で説明したり計算できるようになってきたので， まあこの論文も理解できてきたかな， と．
• で， 本日は数式だのがない部分 (というか論文全体の半分以上をしめる) 文章のほうを時間かけて読んでみたんだけど …… いやー， 今までぜんぜん気づかなかったんだけど (Clark et al. (2003) とか読んでヘンなヒトだとは思ったんだが)， この Clark というのはかなり独特な作文・考えかたをする， というか． ケンカ相手としてはてごわそうだ (べつに今のところケンカする理由もないけど)．
• 総説論文の主張としては明確・妥当なもので， 階層ベイズモデルは「観測されてない量」のモデルへのくみこみや， (stochastic components ときれいに分離可能だと思われがちな) 決定論的 components で説明できない変動のあつかいにすぐれていて， これらは「高次元」 つまり 使うべきデータの種類やパラメーターが多くなりがち・複雑になりがちな 統計モデリングで重要になる， と． であるからして， 生態学研究者は「高次元」なデータ・現象をあつかっているんだから， それこそが ``Why environmental scientists are becoming Bayesians'' ですよ， というもの．
• なにが「独特」かといえば， 途中のあれこれ (注: 久保のてきとー解釈がかなり混入)，
  • これまでのありがちな Bayesian な生態学モデリングというと， すぐに確率に関する哲学的な議論やったり， 非ベイズ vs ベイズ (しかも simple Bayes という主観的なやつ) の推定結果比較とかやったりしてるけど， そんなのは不要だ
  • 哲学的な問題が現代の統計学の方向性とか 決めたことなんてない
  • Bayesian の手法が発展・普及してきたのは むしろ pragmatism の観点で理解すればいいだろ
  • 似たような仮定をすれば， 非 Bayes と simple Bayes は似たような結果をだすので 比較しても無駄
  • むしろ (非 Bayes + simple Bayes) vs 階層ベイズモデル， という対比のほうが重要じゃないの
  • それから， 非 Bayes の confidence interval と Bayes の ``credible interval'' の区別って無意味っぽい 気がするから， ここでは気にしないで Bayes でも confidence interval と呼ぶ
  などなど． まあ， 言いたいほうだいというか， その言いたいほうだいにいちいち (上には書いてない) 根拠とかが示されていて， ですね． これって， 初心者がつまずきやすいところを すごい勉強家が懇切丁寧にフォローしてくれているのか， それとも ナマはんかな知識にもとづいてばかな議論ばかりする連中に対して ちょっとひねくれた偏執的人物がもううんざりだと思いつつ書いているのか …… うーむ， 私の読解力ではどちらなのかよくわからなかった．
• お， 露崎さんから何やら (複雑な内心に去来するさまざまな葛藤を想像させる)

  ふん!

  のヒトことだけ書かれたメイルをいただき， それといっしょに

  Hobbs, N.T. and Hilborn, R. 2006. Alternatives to statistical hypothesis testing in ecology: a guide to self teaching. Ecological Applications 16:5-19. (url)

  の PDF ファイルを送っていただいた． その figure 1 を引用すると，
  
  
  となっていて， これは ESA (ecology society of America) のぢゃーなるの論文で使われているデータ解析手法のうち traditional statistics (「ゆーい差」決戦主義なやつ) と new statistics (尤度・Bayesian にもとづくの) の推移をあらわしてるそーで．
• ふーむ， ``Ecology'' まわりでもデータ解析手法の世代交代ってのは， ゆっくりしたものなのかな …… まあ， もしこれを ``Ecological Reseach'' とかでやれば一号あたりの ``likelihood'' 使用論文数は 2006 年時点においてもほぼゼロだと思うけれど．
• お茶部屋雑談． 黒松内実習に参加された (野郎でない) 大学院生たちからブナ林調査の様子などうかがい， また野郎大学院生 2 名の働きがふがいないものであった との講評を拝聴する． ここで重要なのは， その講評内容そのものというより， この地環研 A 棟 7-8F において 「講評」 などの権限をもちそれを行使する立場にあるのはどういったヒトたちなのか， という社会構造であり， 私がそれに恐怖しているという事実である．
• 一日中悪天かと思っていたら， 日没寸前におだやかになった．

[日没 1850 ごろ]

雲の層が高度 1000m ぐらいにできて， 西側の空が晴れたのでこうなった． 8F 非常階段からのながめ． 私だけでなく， 院生たちも見物にきていた． 拡大版．

• 本日は他人の論文ばかり読んでて， 書きなおし作業はススまなかった． 2030 研究室発． 2100 帰宅． 晩飯．
• ふーむ …… べいず・うぃき掲示板 の伊庭さんの投稿によると， 東京都港区南麻生の 統数研 の屋上が何やらアヤしげなことに． これは google earth がなくても google maps で確認できる． たしかに南北逆ですな …… ひょっとして， わざと?!
• [今日の運動]
  • うんどう三連休， か ……
• [今日の食卓]
  • 朝 (0830): クロワッサン．
  • 昼 (1410): 研究室お茶部屋． 米麦 0.7 合． ゆでサバ． 海藻スープ．
  • 晩 (2230): 米麦 0.7 合． モヤシ・ネギ・ブナシメジ・油揚・サバぶしの味噌汁．