ぎょーむ日誌 2003-07-18

2003 年 07 月 18 日 (金)

• 0840 起床． ねぼうした． 0850 自宅発． 晴． 0900 研究室着． 朝飯． コーヒー．
• 今日も朝からかとーさんが待機している． で， 事務からの電話に呼びつけられていった …… 数十分後に戻ってきて曰く 「けーさつ官のような狂った眼つきのヒトたちでしたよ ……いろいろねちねちと聞かれて」． もちろん， はっかーかとー先生が 中央官庁の派遣監査官ごときにヘマをやるはずもなし．
• しつこく計算みなおし …… 私の尤度方程式と， 粕谷さんが別経路で導出した尤度方程式は別経路で導出したのは， 合致してる， と考えてよさそうなんだが．
• 一週間ほど前に生物統計メイリングリスト biometry に 「正規分布とある確率分布の『近さ』を定量的に表現するには， どうしたらよいか」 という質問投稿があったので， そんなの Kullback-Leibler 情報量 (KL-divergence) つかえばいいじゃんという投稿してみた． すると KL-divergence って何をあらわしてるんでしょう， と質問がまた返ってきたので， 教科書的に

  直感的な意味合いとしては， ある確率分布 X を (この問題の場合) 正規分布の代替物として使った場合， どれぐれらいの情報量が損なわれるか， をあらわしたのが KL-divergence (distance) です．

  と回答してみた (この場合は，あえて正規分布などと書いているけれど， KL-divergence はどんな確率分布にも適用可能)， するとまた質問者の原嘉隆さん (九州沖縄農研・土壌) から「情報量ってなんでしょう」 という私信いただいた． こう， 質問されてる内容は 私がちゃんとよく理解してない領域に徐々に近づきつつあるわけだが …… このような説明を書いてみた．
• 情報量は情報理論の定義される量です． うまくいくかどうかわかりませんが， 我流の説明をしてみます．
• ある計算プログラム S が， 完全な正規分布の乱数を生成できる， とします． このときにこのプログラム S を「情報源」 と呼ぶことにします． S から出てくるのは乱数なので予測不能なでたらめさをもった情報源です． ただしその出力乱数は正規分布に従ってる， というのがわかっているので， まったくのでたらめではなく規則性もあるわけです．
• つぎに S を改造したプログラム S' があって， それは正規分布に似ているけれど 少し異なる未知の分布 X にしたがう乱数を生成している， とします． この場合， あたかも正規分布情報源である S から出てくる値に 何かわけのわからない「雑音」 を足したり引いたりして歪めてしまった値を S' は生成している， と解釈します． つまり S に比べて S' は予測不能なでたらめさが増大している， ということです…… S から出てくる乱数は正規分布にしたがっている， とわかっている， しかし S' はそれをどう歪めているかよくわからない， という状況ですね．
• KL-divergence はここで「もとの情報源である S に比べて S' はどのぐらいでたらめさが増大してしまったか」 を表しています． つまり私が前のメイルで「情報量の損失」 と言ってる部分は「でたらめさの増大」 と言い換えられます．
• つまり「でたらめさの増大」⇔「情報量の損失」 だから， 情報量ってのは「でたらめではなさ」 をあらわしてると言いたいわけ． あるいはでたらめさは予測不可能性で， 情報量は予測可能性 …… というような言い換えばかりではいかんのかな． ともあれ， Claude Shannon ってのは， よくもまぁこんな概念を考えついたもんだ (この著明な数学者が 亡くなった のはわりと最近である 2001 年 2 月末 …… なぜか「ぎょーむ日誌」でも言及している)．
• というふうに午前が終わって昼飯． 直射日光つよそうなんで北大構内走はあとまわし， の予定．
• 地環研図書室で 統計的検定は有効か　−有意性検定論争− を借りてくる． なるほど， これは原著者も訳者も少しばかり異端なかんぢなのかもしれない． とはいえ， 批判そのものは健全なものという気がする (もし仮にいくらかまとはずれであったとしても)． そもそも科学の道具としての統計学には， 根本原理から運用実態にいたるまで さまざまなアヤしさがあるのだから (数学としては首尾一貫してるにもかかわらず， あるいはそれゆえに)． まぁ 統計学に限らず， 科学というのは方法論からその帰結にいたるまで， 永劫の懐疑をつきつけるというのが本質なんだからしょうがない．
• 昨日の午後の仕事があまり進捗してなかった理由を思い出した …… 以前にやった Pasoh データ怪しげ trade-off 解析 (共犯久保) をなんとか救援しよう， と甲山さんが言ってきて …… そのやりかたというのが， ほとんどクロに近い灰色被告側弁護士の法廷戦術のごときもの， だったんで 「そりゃダメでしょう」 とか議論してて時間を費したんだよなぁ．
• しばらくは放置できそうだけど， Pasoh データ解析からは逃げられないんだろうな． となると， かかる口先のごまかしではなく， もう少し巧妙な策が必要という気がする． いわば， Hubbell の熱帯林中立共存説のごとく 誰でもいちゃもんつけられるけど， より人為的な対抗モデルしか提示できない (「本家」たる木村資生の遺伝子の中立説もそうなのか?)， というようなヨワいふり→誘出撃滅型のワナを内包したわくぐみ が必要なんじゃなかろーか? ふりも何も実際に当方はすさまじくヨワっちいわけだが．
• ナニやら某研究科事務室のおぢさんたちがぞろぞろと かとーオフィスまでやってきて，
  「かとー先生はこちらでしょうか」
  「まったくあの会計検査院の役人のヒドさときたら……」
  「昨日の◯学部の監査のときみたいになってしまったらどうしようかと」
  「よくぞあれほど手際よく…… 助かりました」
  ということで， かとーさんが日本国政府から派遣されてきた勘定目付を 短時間で退治した御礼ということでこういうの持ってきた． さすがわ，かとー先生．

[かとー先生祝捷献上品]

岩見沢の菓子屋 赤いリボン の suger maple 菓子つめあわせ (といっても岩見沢にサトウカエデがあるわけではない)． JR タワー (JR 札幌駅ビル) 地下で調達されたとおぼしきもの． で， その費用はどこから ……

• 他人に雑用を押しつけるのが巧妙なる D2 赤坂君の陰謀にかかって， 北大図書館まで文献複写に． 記名してから書庫に入場し， 不可思議な構造をもつ内部をさまよう．

[北大図書館書庫 -- 迷宮]

「これこそは北日本最大の……」 というわけでもないが， この階段のヘンてこさは迷宮的な雰囲気がある (しかも階段周辺の天井はすごく低い)． 前の階段を下ってむこうの階段を昇ると …… さて， どこに行くのでしょう．

• 北大図書館の基本ワザ． 本館書庫内の書籍・雑誌を「借りずに」 複写する方法．
  1. 地環研図書室で 「複写機使用伝票」 なる三連 (A/B/C) の紙切れをもらう
  2. 北大図書本館に行き， 書庫入室の記名をする
  3. 係員に頼んで「地環研」用の コピーカードを借りる
  4. 書庫内で必要な文献をさがす
  5. それを「書庫内の複写機」 (書庫 4F 西側に設置) でコピーする
  6. このときにカウンターの変化 「複写機使用伝票」 を記録しておく
  7. 文献をもとの位置にもどす
  8. 書庫退出時にコピーカードを返却し 「複写機使用伝票」 を提出する
• 研究室にもどって複写してきたのをぱらぱらとながめる．
• 応用統計学会 ML で「連合大会プログラムできた」 という案内があったんでダウンロードして読んでみる (私は発表申し込みとかやってない)． この「連合大会」というのは 応用統計学会・日本計量生物学会・日本統計学会 (ついでに日本行動計量学会) が「連合」して大会をやります， というもの．
• これだけあれこれくっつけても， 発表者総数は生態学会のそれよりはずいぶんと少ないような気がする …… 一人 20 分間の口頭発表， ということでハナシをじっくり聞きましょうということなのかな． で， 発表者も厳選されてる， と．
• とはいえ， やはり本邦は統計学者の数があまり多くはないんではなかろーか． ちなみに国内のどの大学にも統計学部はもちろん統計学科もない (しいていえば 統計数理研究所 の総合大学院統計科学専攻)． また， 統計学の研究室がある数学科もそれほど多くない (たとえば北大理学部 数学科 にはない)．
• 会期は今年の 9/2-9/5． どんな様子なのかいっぺんのぞいてみたいんだけど (発表しない参加者は会場までいって会費を支払えば参加できる)， 現在の仕事進捗では無理のような気がする …… 9 月末の植物学会 札幌大会 ってのがあってですねえ．
• 2120 研究室発． 2140 帰宅． 体重 71.6kg．
• [今日の運動]
  • 腹筋運動 30 × 3 回．
• [今日の食卓]
  • 朝 (0910): 研究室お茶部屋． パン． キャベツ・トマト・マイタケの炒めもの．
  • 昼 (1300): 弁当． 研究室お茶部屋． 米麦 0.7 合． キャベツ・トマト・マイタケの炒めもの．
  • 晩 (2230): 米麦 0.7 合． キャベツ・トマト・エノキダケのカレー．