ぎょーむ日誌 2001-09-28
2001 年 09 月 28 日 (金)
- 0330 起床.
変な時間に目がさめてしまった.
まぁ,
5 時間ぐらいは寝たからいいか.
- 昨日いろいろな人から聞いた話を参考にしつつ,
要旨集を読んでみる
……
うう,
LIGNUM を先頭に樹木モデリングの世界ってのは
おそろしく発展しつつあるねえ.
その中にあって PipeTree などはごくごく陳腐というか
「枯れた」技術の集積というべきだな.
このあたりは私の文献調査能力の限界によるものである.
- 今回の発表は Lindenmayer-system (L-system)
関連が多いんだけど
……
これが今回の会議のひとつの眼目かも,
と考え直す.
「いまさら L-system?」
ではなさそうなんで.
- このへんに,
ありとあらゆる樹型構造の動的な生成というものを
統一的に記述しうる普遍言語とその文法の追及,
というものに対する欧米人たち
(などとくくってよいのか?)
の執念を感じる.
LIGNUM もモデリング記述部を分離した
(言語 ``L'' だそうで),
という話が紹介されるようだ.
これによってもともとは針葉樹シミュレイターだった
ソフトウェアをエンジンとして,
サトウカエデ実生の動態まで書けてしまえるらしい
……
- こういうアイデアは誰でも考えるところではあるんだよね.
つまり形而下的には,
樹木シミュレイターから
どうしようもなく怪しげでいんちきくさい部分と
何度でも再利用可能なところををきちんと分離して,
いろいろと使いまわしのきく柔軟なシステムを作りたい
……
というのが動機のひとつになっているはずだ.
私なんぞが作ってる三次元計算用虚業ライブラリーも,
そういうひとつの努力ではあるんだが
……
この方向をつきつめると
樹木動態というか動的な樹型構造生成は何でも記述できる言語,
と発展していくのは自然な流れではある.
- とはいえ,
計算機専門家までうまく動員してどんどん開発を進める
先方にはつきあいきれそうにないねえ.
北欧人おそるべし.
しかも他の国のプロジェクトでも似たようなのが
開発されてるみたいだな
……
今後は自作コードを保守するにしても,
たとえば LIGNUM とその樹木言語 ``L'' でできてしまえることは
そちらを使う,
というふうになっていくんだろうか.
- ということで,
この研究会での PipeTree のウリは何なのだろうか,
と再検討してみる.
よくわからん.
ということで要旨集を読み直す.
これだけ読むと皆さんえらく立派に思えるんだよね.
- 夜が明けたのでシャワー使って食堂に行く.
0730.
アタマの中の配線がまだ英語対応になってないので,
会話にうまくついていけない.
- 0830
樹木モデリング会議
開始.
まずは今回の主催者である
Christian Messier
(Universite du Quebec a Montrieal)
が挨拶.
後から知ったんだけど,
樹木個体だけでなく森林動態なんかも調査してる人である.
SORTIE 改造してけべっくの ice storm 撹乱な森林動態を
モデリングしたり
……
そういうことのできるポスドクを傭うわけね.
同じく主催者である
Marty Lechowicz
(McGill University,モントリオールの英国系大学)
と Pierre Bernier (Canadian Forest Service)
も挨拶.
- 研究発表始まる.
質問時間いれて一人 25 分.
口頭発表は二日間で 20 個だけ.
発表者の多くはこの
Plant Architecture Information Systems
(PIAS)
に列挙されてる.
日本人はのってないけど.
- Frederic Boudon (CIRAD).
樹型構造を記述し視覚化する形式のひとつである MTG と
その実装である
AMAP/AMAPmod
の開発をしてる
(リーダーは Cristophe Godin?)
Montpellier マフィア
の一員である.
MTG で樹冠の粗視化を行う計算機よりの話を紹介.
- つぎもフランス人.
Jean Dauzat (CIRAD).
リモセンで読んだ綿花畑の赤外線パターンを
三次元樹木モデルで再構築する話.
温度分布から水ストレスがわかるそうだ.
- 予定の順番が変更されて,
ここでいきなり
Jari Perttunen
(The Finnish Forest Research Insititute).
フィンランドの樹木シミュレイター
LIGNUM
の主任開発者というべきヒトである.
話は LIGNUM の設計変更やって L という Generic Programming 指向な
言語でモデリングできるようになって,
L-system なんかもあつかえるという発展の紹介.
話の最中にいきなり C++ な呪われコードを出してみたり
……
なんというか実に独特な人物で,
Jari が見れただけでもこの会議に参加する価値はあったというもんだ.
-
Przemyslaw Prusinkiewicz
(University of Calgary).
L-system を研究する計算機科学の先生.
このヒトたちが作ってる L-system を演算・視覚化する
cpfg
だの
Vlab
というシステム,
かなり便利そうに見える.
Window$ 用しかないけど,
L-studio
なるツールとか.
L-system な植物の上をいろいろなシグナルがかけめぐる話.
さらに上述 L 言語の実装の一例というか,
一種の C プリプロセッサみたいな C+L と
L-system の結合にも言及.
- Pascal Ferraro (University of Calgary).
おなじく L-system な植物の話.
「ふたつの樹状構造が似てる」
というのを定量的に表現するために
editing distance とゆーのを定義する.
つまりふたつの異なる樹型が一致するのに
何回にわたって挿入・欠失・変形が必要か,
というのを測定してそれを「距離」としよう,
というものである.
なるほどー
-
Pekka Nygren
(University of Missouri).
めりけん大学で教えてるけどフィンランド人である.
地下部のデータを集めており,
それを LIGNUM で三次元根っこモデルを作ろう,
という話.
根のパイプモデルである.
- 昼飯食ってからポスターセッション.
梅木・上野・清和各氏のポスターもあり.
印象的だったのは
Christiane Eschenbach
(University of Hohenheim)
のハンノキシミュレイター
ALMIS
.
Abies Pipe にさらにガス交換・貯蔵・地下部を追加したようなやつで,
実測された成長によく対応してるように見えた.
- あと,
けべっくの Sherbrooke 大学の人たちがやってた
簡単な樹冠形状のモデリング.
f(x,y,z) = [ (x/rx)^(2/n2) + (y/ry)^(2/n2) ]^(n2/n1)
+ (z/rz)^(2/n1)
という関数型を使うと,
n2 を変えるだけで円筒→カドの取れた円筒→半楕円球
→とがった半楕円球→三角錐→とがった三角錐が生成されて面白かった.
- 順番がかわって Sylvain Delagrange
(Universite du Quebec a Montrieal).
Messier のところの大学院生.
Sugar maple と yellow birch の稚樹全体を
被陰して構造がどうかわるか調べたという話.
つづいて
Eero Nikinmaa
(University of Helsinki)
がカエデの稚樹を LIGNUM で計算しちゃう話を紹介.
- Kenneth Stadt (University of Alberta).
MIXLIGHT という樹冠生成→開空度計算の自作プログラムの紹介.
林分・群集スケイル.
データとの対応がよい.
うーん,
どうして私の三次元虚業ライブラリは対応まずいんだろうか
(そういや,
ポリゴン版ではデータとの比較をまだやっていなかったな).
-
Brendan Lane
(University of Calgary).
Prusinkiewicz の大学院生.
植物集団の動態モデルである二次元連続空間の点過程を
これまた L-system で書いてしまって,
つぎにそうやって生成した二次元パターンを
三次元 L-system 樹木で置き換える話.
Visualization の技法紹介.
-
Pekka Kaitaniemi
(University of Turuku).
フィンランドの大学院生.
亜高山 (といっても標高 200-300m だそうだが)
の Mountain Beech のモデリング.
やはり LIGNUM の改造.
なんかパラメーター推定のやりかた変じゃない,
といちゃもん質問したら,
Logistic 回帰を二重に組み合わせた
なかなか巧妙な方式だとわかった.
うーむ.
でもあとから考えたらやっぱそれで最大成長量を
推定するのはちと変な気もする.
- Mitch Allen.
Ted DeJong
の大学院生.
UC Davis で開発されてるモモの果樹シミュレイター
PEACH
の紹介
(げ,
このソフトウェアって値段がついてる).
ソースからシンク (モモの実とか) に資源流れていくような
モデルなんだけど,
その流量が節の通導に制限されていたりする.
こういうふうに資源移送のコストがあるので,
光のあてかたを変えるとどこに実が成るかが変わったりする.
- ……
というふうに一日目の発表終了.
最後に Marty Lechowicz がまとめの議論を司会.
Eero Nikinmaa がモデリングが細かくなってキリがないんで,
aggregation 考えなくては,
というような議論.
- この日は晩飯くったらすごく眠くなったので,
さっさと寝てしまった
(そして翌朝 0300 ごろに目をさます).
- 今日の食卓
- 朝 (0735):
バイキング式.
シリアル,
クロワッサン,
パンケイキ.
- 昼 (1240):
野菜ポタージュ.
ハムのメイプルシロップ照り焼き.
ピーチパイ.
- 晩 (1905):
マッシュルームサラダ.
アスパラガスとブロッコリーのポタージュ.
アルバータ牛のサーロインステーキ
(でかい!).
ティラミス.