ぎょーむ日誌 2000-11-25
2000 年 11 月 25 日 (土)
- 1330 起床.
寝たのが 0500 ごろだったか.
う,
いかん.
時差問題が生じる.
- ……
と言いつつ,
起床した後の 15 時間を要約するならば,
ひたすらに
nethack
猿.
日曜日の夜明けには nethack 廃人になっていました.
なんたる休日.
しかしカタルシスはあったな.
- もちろんこの程度の集中作業では nethack 世界の
ごくごく一部しかかいま見ることはできない.
しかし今まで到達できなかった領域まで探索できた私は
今回ばかりはあまり未練もなく Thinkpad 上から
同プログラムを削除できたのでありました.
- 「もう十分研究できた」
からではなく,
その逆.
これほど苦労して道はまだまだ遠い.
見てくれはすごくシンプルだけど
実は複雑きわまりないこのゲイムに
生活のすべてを捧げなければ「究める」
ことなどできやしない,
ということが実感できたからだ.
- プレイ中
「どうやったらこれほど複雑なプログラムの
bug を最小限に押えつつ長年保守できてんだ ?」
という疑問がアタマを離れなかった.
プログラム開発における「保守」
というのはその語感とはうらはらに,
大規模な改造を含んだ作業なのである.
nethack を開発保守してる人々は文字通り
hacker とでもいうべきスキルの持ち主ばかりらしく,
C++ などつかわずに C だけでこんな芸当を
やりとげているのである.
- 異常に自由度が高く作りこまれていて
……
およそその
「地下迷宮世界」に存在する
あらゆる
モノとモノのあいだで
多くのコトが試行できてしまう.
- いわゆるコンシューマーゲイム機用
和製ロールプレイングゲイムの主流のように
「何もしなくてもススむけど,
作者の意図どおりの話に乗らないといけない」
なる方向性とは逆と言いますか,
こういうのをてきとーに解答しても何とかなる
マークシート塗りつぶし式の
センター試験のようなものとたとえるなら
(とかえらそーに言いつつ,
実はファミコンから PS2 に至るまで全く使用経験もなく,
汗顔のきわみ),
nethack は
不正解はあるけれど
正解はない論文作成のようなものである.
- とはいえ,
当節流行のオンラインゲイムのように
全くミッションフリーというワケでもなく,
いちおうは
「地下迷宮最下層の大魔法使いからアイテムを
奪い返し,
それをもって天上界のモメごとに
……」
うんぬんといった流れはある.
これに対する
「こうすれば達成できる」
という安直な解法が存在しないのである.
この「世界」の自由度の高さ,
さらに莫大な数の確率論的サブモデル群のせいで,
同じゲイムでありながら
毎回毎回まったく異なる様相を
展開するからである.
- もちろん参考にすべき文献はネット上に多々存在する.
森林動態モデルを作るときには他人の研究など
ほとんど参考にしない私ですら,
nethack で遊ぶときは
(さっさとひととおり終らせてみたい,
という欲求もあったんで),
spoiler と呼ばれる
多量のファイルをダウンロードしてきて
プレイする仕儀となった.
これはいわばサブモデルの挙動を解説するものである.
- さらに通常モードでは死んでばかりで
前に進めないだろう,
との確信があったので
「探検モード」
で同プログラムを動かしてみる.
これによって状態を途中で保存しつつ
進行できるようになる.
では通常モードとは何かと言えば,
かかる途中セイヴを許していない.
nethack ではキイを一回押し間違えたら
則終了ということがよくある.
終了したら何もかも失ってしまって
最初からやりなおしである.
しかし世の中には
これほど苛酷な条件を課せられても
ラクラクとクリアーしてしまう
猛者がぞろぞろいるのは驚きという他ない.
なんたる気力と体力.
- 私ごとき不注意人間などは,
spoiler をカンニングしつつ
危なくなったら保存する
ずるい探検モードでもってしても
「メデューサの島と城を突破して死の谷に到達」
までに 50 回ぐらい死んでしまった.
これではほんの序盤突破,
なのである.
- 簡単にどう進めたか説明してみる.
まず最初に職業と性別を選択しなければならない.
これが「騎士」とか「僧侶」のようなありがちなものから,
「観光客」「考古学者」などなどワケのわからぬまで
含む十数種類の中から選ばないといけない.
どれを選ぶかで難易度がぜんぜん違う.
私は初心者むきの
「ワルキューレ (Valkyrie)」
ばかり選んでしまい
性別は自動的に女になる
(ただし,
ゲイム中の性転換させられることもある).
- 開始時にはロクな装備なく能力も貧弱である.
ただし探検モードの場合には
最初から「願の杖 (wand of wishing)」
が与えられているんで,
いくつかの高性能アイテムを生成できる.
spoiler を見ながら
「祝福された +2 灰色ドラゴンの鱗鎧
(blessed +2 gray dragon scale mail)」
「祝福された 錆びない +2 力の小手
(blessed rustproof +2 gauntlets of power)」
「祝福された 錆びない +2 ミュルニール
(blessed rustproof +2 Mjollnir)」
「祝福された 保存の鞄
(blessed bag of holding)」
……
などなど.
- さらに開始時には仔犬か仔猫がペットとして
旅に随行する.
その主要な使用用途は戦闘時の補助と
地下迷宮内の店からのかっぱらいである.
しかしペットの飼い主に対する「愛情」も
決定論的かつ確率論的サブモデルで減衰していき,
ちょっと油断すると野性化して牙をむく.
愛情をつなぎ止めるためにかなり注意が必要なのだけど,
失敗すると泣く泣くの死闘となってしまう.
- 自由度高い nethack のことなので,
犬猫だけでなく
他のモンスターもまたペットになりうる.
(後述するように)
自分自身で出産してしまった
「灰色ドラゴンの子供」
を三匹ほど引率しなければならぬことをあったし,
あるいは
生きとし生けるもの皆殺戮してしまう
「ミノタウルス」などの飼い主になると,
通過した場所はことごとく廃虚と化した.
- 開始後しばらくして
地下迷宮の本線からは別れている
「ノーム 鉱山 (Gnomish mine)」
への分岐点が現れる.
これは選択自由であるが,
能力を高めるためと「幸運の石」を得るために
たいていそちらに進む.
後者を装備することによって,
乱数が支配するこのゲイムにおいて,
多少は「サイコロの目」がこちらに
有利になるのである
(死んでも復活できる探検モードにおいても,
これは重要である).
- この鉱山は
「瞬間移動の罠」
「下層への落し扉罠」
などが多く気をつけないといけない.
自分が引っかかるだけでなく,
勝手気ままにちょろちょろ動き回る
ペットどもが気づかないうちに
これでよく行方不明になるのである.
放置しておくと,
次に会ったときには
強敵になってるかもしれない.
- 書き忘れていたが nethack では
新しく始めるごとに地下迷宮の構成
(迷路の形状・アイテムの配置・
罠の位置や出現するモンスターなど)
が確率論的サブモデルでもって
作り直されてしまうのである.
- ほうほうの態でようやく「幸運の石」を回収すると,
次なる分岐は「クエスト」である.
こっちは終了までには
一度は通過しなければならぬらしい.
最初に選んだ職業ごとに異なる「クエスト」
が出現する.
敵の中級ボスからゲイム進行上不可欠なアイテムを
奪還する,
というスジは共通なんだけど.
- spoiler によると「ギーク (Geek, 計算機おたく)」
とかいう変な職業 (Nethack TNG だけ?) を選ぶと,
びるげいつから nethack のソースコード奪還,
なるクエストになるそうな.
- 「ワルキューレ」の場合だと,
まず氷の宮殿で
「ノルン (Norn)」に能力チェックされる.
この言わば書類審査がなかなか厳しい.
門前払いになっては能力を高めて出直す,
の繰り返し.
- それにようやくパスすると,
溶岩の川が流るる地獄のような数階層をさ迷い,
「サーター卿 (Lord Surtur)」
なるカタキを見つけ出して打倒しなければならぬ
(プレイヤーはこの「クエスト」も
途中にしたまま放り出しておくことできるんだけどね).
このカタキというのが対戦してみると,
実にイヤらしい厄介な相手で
……
- 片づけたご褒美に,
ありがたみのよくわからぬアイテムをいくつか
「ノルン」からわけてもらって「クエスト」終了.
- 次の分岐は「フォートロディオス (Fort Ludios)」.
これは一階層だけの要塞であり,
大金が入手できる以外はとくに何もない.
全然立ち寄る必然性はないのだけど,
nethack 世界の観光ということで踏み込んでみると
……
うーむ,
生きて帰るために
それぞれ 50 個体以上からなる
人間の兵隊とモンスターを殺戮することになってしまった.
膨大な作業.
ひとつの階層内にすごく高密度配置されていたのである.
あとからネット上の別の spoiler 読むと,
これを効率よく処理するためには
「敵の力で敵を撃つ」
ような防御装備を見つけておくべし
とあった.
- 私にとっての最後の冒険の地となったのは,
「メデューサの島」と
その下の階層の「城」,
さらにその下の「死の谷」であった.
これらは「本線」上にあり
避けることできない.
上に書いたように,
地下迷宮はこの先にまだまだ
続くのだけど
……
(さらに地下が済んだらこんどは天上界).
- 「メデューサの島」で厄介なのは,
その女主人の打倒ではなく
(これはギリシア神話のペルセウスよろしく
目隠しをつけて相手を見ないまま手さぐり状態で
戦えばよいだけである),
島の周囲を囲む「海」の突破である.
うっかり水にとびこんでも
泳げないから自動的に元にもどされるし,
装備の金属類は錆びるし,
魔法を書いた巻物のインクが流れて白紙と
なってしまうし,
水薬のたぐいも薄まって効能のない
単なる水と化してしまう.
同じことは「城」を囲む「堀」にも言える.
- spoiler 読むと,
この難所を乗り越えるために,
何種類かある「浮遊アイテム」を
あらかじめ入手しておくのが常道らしい.
しかし「早く先に進めること」ばかりが
念頭にあって,
あと先を考えていなかったわが「ワルキューレ」
はそのようなケッコウなモノを所持してない.
- しかしながら,
nethack の自由度の高さのおかげで,
私などのようにウカツなプレイヤーでも
常識的ではない独自の解決方法を
模索できるところは面白い.
まぁ,
「独自」といったところで,
すべては作者たちの手のひらのうち,
という気もするけれど,
他の多くのプレイヤーが気づいてない
(というか,
nethack 達人たちから見ると効率の悪いかもしれない)
策を「発見」できるのはちょっと嬉しい.
奇妙に聞こえるかもしれないが,
おかげでココロ安らかに nethack 研究から
ぬけ出すことできた.
- 以上のような意見あいで「発見」した
特殊な技法はふたつ.
ひとつは「海を凍結させる」.
もうひとつは
「空飛ぶモンスターに変身する」.
- 前者は「吹雪の杖」を用いる.
これは
寒さに弱いモンスターを
効率よく撃破していくための
攻撃用の魔法アイテムである.
ところが
絶望の「海」を前にして,
ふと思いついて,
このアイテムをふってみると
……
おお,
凍結した水面に一筋の通行可能な道が
……
- ただし「吹雪の杖」は
(他の杖と同じく)
数回で使えなくなる.
すると「城」の後ろまでぐるっと
「堀」の上を回りこむときには大変だ
(実は
こういう事態に追いつめられること自体が,
不真面目プレイヤーの特徴であり,
ふつーは「祭壇」にせっせと倒したモンスターを
捧げて守護神の機嫌をとった上で
「城」の開門する「旋律」を聞き出すべきなんだが).
- そこで,
これまた
たまたま持ち合わせていた
「変化の杖」
を用いて,
自らをモンスターに転じて空を飛ぶのである.
本来
このアイテムは強敵を
弱い生き物に変えてやっつけるために
使うことが多い.
- nethack ではプレイヤーは最初から最後まで
人類もしくはその亜種で通せないこともあり,
「モンスター体験」をすることもよくある.
罠にはまったり怪物にやられて
いやいやそうなることもあるし,
このようにバケモノたる特性を活用するべく
自ら変身することもある.
蛇足ながら,
一番みじめだったのは,
ネズミ人間に噛みつかれて,
ランダムな時間間隔でネズミ女に転じる体質に
なってしまったときである.
そうなると装備の重さに押しつぶされて
一歩たりとも動けなくなってしまう.
- さて「変化の杖」をただふっただけでは,
どんなモンスターに
変えられてしまうかわかったものではない.
兵隊蟻とか
どろどろした slime mold なんかにになっても
何の役にもたたぬ.
「変化制御の指輪」があれば
このあたりは自由に決められる.
しかし,
それ以外にも方法がある.
- 今回はずるい探検モードで動かしているんで,
最初から
軽くて強い
「祝福された灰色ドラゴンの鱗鎧」
の着用に及んでいることは,
すでに述べたとおりである.
このときに「変化」すると
かならず鎧と体が一体化して
「灰色ドラゴン」
になるとわかった
(ただしネズミ人間病に感染して
ネズミ女になる場合は例外).
これは悪意に満ちた
「ノームの鉱山」に仕掛けられていた
「変化の罠」を踏んでしまって
無理矢理変身させられたときに
気づいた特性なのである.
でなければ,
「変化制御の指輪」も無いのに
「変化の杖」を自分に振るなどという
暴挙には踏み切れるはずもない.
- 灰色ドラゴンは空も飛べるし,
大量の荷物も運べるし,
戦闘能力・防御能力高いし,
口から magic missile とか出すし
……
おまけに雌ドラゴンのときには
子供ドラゴンまで産卵できてしまうのである.
無性生殖でぽんぽん卵が産めるので,
それを背負って歩いていると孵化してきて
「ママー」とまとわりつくのである.
期せずして「出産」を体験してしまった.
- ……
というふうに,
nethack はちょっとした観察や思いつきの
組合せで状況を自在に打開できる,
まぁ非常に面白いゲイムなのである.
- しかしこのまま亡者たむろする
「死の谷」をぬけて,
いくつかの支線をいったりきたりしつつ,
最下層に到達するまではまだまだ遠く,
かつその後に上まで登り返して
さらに天上界の戦い
……
まで何週間かかることやら,
というのがわかって挫折した次第である.
- ともかく金曜日の夜から日曜日の朝までの一日半は
この地下迷宮世界の部分的探索とそこからの
「生還」に費されたのでありました.
あ,
この報告も日曜夕方から 2000 までかかって
書いてしまった.
- 今日の食卓
- 朝 (1400):
スパゲッティー.
ソースは昨日の残り.
- 昼 :
食ってない.
- 晩 (2130):
スパゲッティー.
ソースはニンニク・ピーマン多量・エノキダケを
炒めたもの.