[3. 平均場近似]
Q. 平均場近似とは?
A. 「たくさんの林分のサイズ分布の平均値をとり,その平均値を成長・死亡のサブモデルに代入すると,森林全体のサイズ分布の平均値が計算できてしまう」と仮定する計算方法.サイズ分布(ここでは連続関数)だけを用いてサイズ分布の時間変化を計算する.
Q. 「連続サイズ分布」とは?
A. 定義としては「区間x とx+dx の間の個体数」(x はサイズ)をdx で割って,dx→0 の極限を取ると「サイズx における密度n(x)」が得られる(に違いない...そうに決まっている...).関数n(x) は連続である場合だけを考えている.「サイズx とx' の区間に存在すると期待される個体数は?」と尋ねられれば,「n(x) をx からx' まで積分したもの」と答えればよい.実は期待個体数ではなくて,これはまだ「単位面積あたりの密度」なんですけど.
Q. 平均場近似で得られた結果を要約すると?
A. IBM の結果に比べると,BA もサイズ分布も推定値がかなり過小であった.
Q. なぜ平均場近似は過小評価の結果を出すのか?
A. 短く言ってみると「局所的な林分動態を考えているにも関わらず,どの樹木の頭上にも消えることなく常に『平均的な被圧木』が存在すると仮定しているから」である.実際の林分(あるいはIBM の計算)においては,「もし中径木がたくさん存在するするならば,それは大径木が存在しない確率が高く,そのような林分においては中径木は成長が早く死亡率が低い」ということが実現している.
Q. 平均場近似を森林動態解析に使用する利点は?
A. 無し.強いて挙げれば...個体間相互作用が重要では無いので,そんなものは無視して差し支えない考えられる森林生態系を調べる場合にはたいへんに有用である.もしくは完全対称競争をしている場合,すなわちサイズ非依存的な競争.森林生態学者は樹木のサイズが競争様式に影響を与えないと考えることを好むのか,しばしばこういった前提が採用されているようだ.「平均場近似は計算がラクですぐに終る」のは確かにそうだけれど,そんなのはどーでもいいことだ.前世紀ならともかく.
Q. 平均場近似の欠点は?
A. 利点がないこと...あなたがこの数理モデルに実用的な何かを期待しているならば.
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