ぎょーむ日誌 2000-04-15
2000 年 04 月 15 日 (土)
- 0930 起床.
晴れ.
うーん,
4 月前半はまとまった仕事が片付かないまま
終わってしまいつつあるなあ.
- 岸野さんの統計学の本を読むという研究に関係ある
読書をしたり,
学研が出してる歴史群像という通俗歴史ものというには
ややマニアックすぎるほどに実証的なスタンスをとりたがる
雑誌の記事を読んでみたりする.
- ひるごろ朝昼兼用の飯を食ってから琴似周辺で買物にでかける.
- なるほど休日の古本屋はけっこう混むんだなあ,
と初めてわかった.
あれだけ客が入れば琴似で (それなりの) 高密度で
分布してる古本屋も共存できるのかもしれない.
- いろいろとどうでもよい本など買ってしまった.
- いちばんスゴいと思ったのは,
200 円で買った「最新 核エネルギー論」
という書籍.
タイトルからわかるとおりあの怪しげな
「最新科学論シリーズ」
のひとつ.
出版はすでに 10 年前になった 1990 年.
この 10 年間で何もかも変わってしまったと
実感させられる一冊である.
- 冒頭からいきなりフライッシュマン & ポンスの
「常温核融合」
関連の話題でトバしてくれる.
彼らのいかがわしい
常温核融合論文が掲載されたのは
1989 年だったからだ.
- ちなみにこの「常温核融合」なるものは,
こんにちでは誰も相手にしていない.
実験にはまったく再現性がなく,
もしフライッシュマンたちの実験でホントに
核融合が生じていたとすると
理論的な説明がつかないからである.
たとえば
「どうして実験者は被曝で死んでないんだ?」
とか.
- あ,
ただし今でも常温核融合の研究に
研究費をつぎこんでいる国がある.
それは日本である.
名前こそ「新水素エネルギー」とかなんとかに
変えているんだけど,
通産省はいまだにそういった研究にお金を出し続けている.
わが国の (核融合もふくむ) 原子力関係者は
自らの無謬性にたいへんな自信を有しているためだ.
- もちろん 10 年前に出版された「最新 ……」に
そのようなことが書かれているハズもなく,
ここでは常温核融合に期待するような取り扱いである.
常温核融合研究で
有名な北大の某せんせーも原稿を書いておられる.
- また,
当時組み立ての真最中であった
動燃の高速増殖炉「もんじゅ」も
華々しく取り上げられている.
「21 世紀に電力供給の主役」
「2000 年には実証炉」
……
うーん,
記事を書いた人達も 5-6 年後には
「もんじゅ」計画が自滅的な袋小路に落ち込むとは
想像だにしてなかっただろうな.
- 「もんじゅ」
は 1990 年代中ごろに
冷却媒体のナトリウムもれ事故をおこし,
さらには
それをてってー的に隠蔽しようとしたことで
袋たたきにあってしまった.
いくら
わが国の原子力工学者ならびに関係官僚諸賢が
自らを神聖視しておられるとはいえ,
さすがにこれはあまりにもヒドすぎたので
「もんじゅ」計画の存続そのものが
再検討されているのは周知のとおりである.
- この本の取り扱いでは
当時は欧米においても高速増殖炉の研究が
さかんに行われたことになっている.
その後の数年のうちに
日本以外は撤退していった.
原子力関係のサイトの広報には
「そのうち連中も核燃料サイクルに
また手を出さざるをえない」
という強気な発言も見つけられる.
ふん.
どうなることやら.
- 最後は核融合炉研究.
なんも変わらない 10 年間でしたな.
この本は ITER (国際核融合炉) 計画
が始動しつつあると述べている.
苫東に来るかも
とか言ってたアレですな.
そしていま ITER は終わりつつある.
アメリカが手を引いて
(そして金も出さなくなって)
しまったからである.
- ネット上の科学記事なんかでも
よく指摘されてることなんだけど
……
いまのトカマク実験炉って
``一億度のプラズマを●秒維持''
みたいな発表がありますよね
(最近はそういう大本営発表すら途切れつつあるなあ).
あれって
ぢつは
ふつーの水素のプラズマを作って
``核融合ごっこ'' に興じてるにすぎない.
重水素・三重水素を反応させないと
核融合にならないんだけど,
実際に D-T 反応とかやっちゃうと
14 MeV の高速中性子がびゅんびゅん飛びだしてきて
手あたりしだい何もかも放射化しちゃうんで,
ホンモノの核融合は恐くてできないんだよね.
- 中性子は電荷を持たないので
磁場・電場なんかではふせぎようがない.
建物や戦車の中にいる人間でも殺してしまう
中性子爆弾てのがありますよね.
発生源が
爆弾だろうと融合炉だろうと,
これほど高速な中性子は
どんなシールドも
すかすかと貫通してしまうってことです.
たまに何かにぶつかったりすると
二次中性子をたくさんばらまくこともあるしね.
どーするつもりなんだろうね.
- 科学の歴史というのは,
姑息な受験テクニックと同じく
「易しい問題から手がつけられて解かれていく」
傾向にある.
後回しにされた問題,
着手されてもなかなか解けない問題
……
こういう問題には
まぁ何か
``本質的な難しさ''
みたいなものがあると考えてよいだろう.
防ぎようのない
高速中性子とかね.
- 高速増殖炉にせよ核融合炉にせよ,
50 年ちかくの長い研究開発の歴史をもつ分野である.
この間に莫大な予算と人員を飲みこみつつ,
かくのごとく
はかばかしくない.
- 原子核工学関係が
工学部の中でも人気を集めた時代もあった.
いまは「原子力」の看板は下ろしてしまったところ多い.
林学と同じですな.
- 地球環境がらみの看板かかげた
機関が学生や研究者を集めているのが
昨今の時世である.
しかしながら,
私の漠然とした根拠とぼしい憶測では,
こういう分野もあと何年かしたら
``終わって'' いくんじゃあないかと思う.
とーとつな意見ですが.
ま,
衰退していくにしろ原子力関係よりはゆるやかに,
だろうけど.
- 「平気でウソをつく研究者」
というのがいる.
「自分のやっていることに間違いはない」
と狂信しつつもホントは不安でしょうがない人々.
ウソをついても
聞かされた相手は自ら進んでだまされてくれる
と信じたい人々.
学会大会など行けば
そういうのはいくらでも見つけられる.
珍しくもない.
ということは
……
うん,
明日はわが身
なのかもしれない.
- 今日の食卓
- 朝昼兼用 (1150):
プチトマト野菜スープ.
朝はなんとなく食べずに.
買い置きのジャガイモ 3 個が
芽を出していたので,
とりあえずこれらの皮をむき
芽をのぞいて鍋でゆでる.
ニンジン一本とタマネギ一個も追加.
完熟プチトマトの缶詰も
まるごと投入.
コンソメスープなる怪しげな粉末など
投入して味付け.
- 晩 (2230): 朝昼と同じ.
あ,
豆腐と見切られセロリー (50円) 一本も
追加した.