生態学では「格子モデル」を用いたモデル作りが流行している。
格子モデルとは何だろうか?
これまでのモデルとどこが違うのだろうか?
個体群生態学は生物の数の変動機構の解明を目的として
研究する分野である。
これまでこの分野では個体群動態に関する
多くの数理モデルが開発されてきた。
たとえば,エサと天敵(被食者と捕食者)の
密度変化を表すモデルがある。
一番簡単なモデルでは,エサが天敵に食べられる速度は
[天敵の密度]×[エサの密度]
に比例している。
つまり,エサと天敵の相互作用は,
あたかもよく撹拌されたビーカーの中の
化学反応であるかのように取り扱われる。
どのような場合でもこういったモデルで問題ないのだろうか?
図1に示した例で考えてみよう。
図1(A)は2種類の生物がよく混合されている。
一方,(B)のほうはそれぞれ同じものどうしが強く集中している。
もし生物が自分の近くにいる個体としか相互作用しないならば,
(A)(B)のそれぞれでかなり異なる個体群動態が観察されるだろう。
また生物の分布は時間とともに変化するはずである。
このように混み具合の空間分布と時間変化が
重要であるような生物集団の挙動を解析するために
「格子モデル」が生態学に導入された。
「生物または生物のすみ場所の配置が碁盤の目状(格子状)になっている」
と単純化すると,数理モデルとしての取り扱いが格段に簡単になる。
この章では格子モデルを使って森林動態の問題を調べてみる。
なお,格子モデルは森林生態学だけでなく
生物学の幅広い問題の解析に用いられている。
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