Evolutionary Genetics 輪読会 (九大・理・生態科学) で行った
紹介の要点です.
(1998.11.08
久保拓弥)
Ecological Genetics 第6章
Daphnia の進化遺伝学
Michael Lynch
(with Ken Spitze)
担当:久保拓弥
[第1回 960823]
導入
・科学のひとつとして,生態遺伝学はかなりばらばらな流儀を発展させてき
た.種の多様性に関する多くの研究では,集団内および集団間の遺伝変異の
程度が評価されてきた.これは種間で見られるものと同じである.このよう
な研究のほとんどではアロザイムかRFLP(遺伝子多型解析)に用いるマーカ
ーが十分に中立なので,集団構造,分化時間などを推定する道具として使え
るだろうと仮定してきた.
・近年おおいに注目を集めているのが,自然集団におけるポリジーン形質の
ばらつきとcovariation の度合いである.これには植物や動物の育種の分野
で確立してきた量的遺伝学の手法を用いる.通常,このような研究は分子デ
ータがない集団でなされるので,(表現型レベルと分子レベルの)ふたつの
レベルでの進化のパターンの関係はよくわかっていない.
・過去20年間,私たちの研究室は分子と量的形質のふたつのレベルにおける
遺伝的な変異を調べてきた.この研究は種内(集団内と集団間)と種間の両
方になされた.モデル系としてミジンコ(Daphnea)属のプランクトン微小
甲殻類を用いた.この属の進化遺伝学的な特性の完全な理解には程遠いが,
十分に進展してきたので,結果をまとめてみる価値があるだろう.この章で
は,次第に明らかになってきたたいへん興味深いパターンを手短に述べる.
・ミジンコの属の中には有性生殖期の欠落したものもいるが,ほとんどは循
環的な単為生殖(cyclical parthenogenesis)で繁殖していて,このような
様式を持つ集団にのみ焦点をしぼりたい.循環的に単為生殖するミジンコは
ふつう,環境が好適であるかぎり無性生殖によって繁殖している.環境が悪
化すると,オスが造られ,これは半数体の卵であるが,これが受精すると休
眠胚(ephippia,休眠卵)になる.完全に干上がってしまう池では,毎年の
新規加入は全てこの有性生殖卵による.しかしながら,いつでも水のある湖
の集団では単為生殖が無期限に行われる.
[補足:「...ミジンコでは,減数した卵核が第二極体の核と融合して倍数
の卵をつくり,これが単為発生する....」岩波生物学辞典第4版「単為生殖
」の項.なおこの辞典ではミジンコは季節的単為生殖(seasonal parthenog
enesis)と説明されている.以下は蛇足.さらに某先生らしき人が同じ項の
[2]で補足しているところによると「進化生物学では,子の遺伝子セットが
親のものと同じになるような単為生殖は無性生殖に含める」そうです.]
分子レベルの進化
・Hebert(1974a,b)の先駆的な研究以来,ミジンコの集団をアイソザイムで
調べる研究が数多くなされてきた.それらの研究のほとんどは10個以下の遺
伝子座を取り扱い,多型の程度が大きいことがわかっている遺伝子座にだけ
着目しているのが普通である.集団内と集団間の生化学的な多様性(bioche
mical diversity)の平均的な度合いを正確に述べることは,このようにま
だまだ難しいものがある.しかしながら,いくつかの一般化はいまや可能で
ある.
・私たちが研究は循環的な単為生殖を行う3種類のミジンコは9個から12個の
遺伝子座に基づいている.これらの遺伝子座はゲル上で見やすいというだけ
の理由で選ばれた.遺伝子頻度を調べて,それを利用してvwを推定した.こ
のvwは集団内の平均的な遺伝的多様性である(Nei, 1987).この統計量は
(全遺伝子に関する)平均ヘテロ接合度と同じであり,サンプル集団がラン
ダム交配しているならばその子供を調べることでわかる.このvwはHardy-We
inberg期待値に基づいているので,アイソザイムの変異がどの程度なのかを
知る有用な尺度である.アイソザイム変異は集団の構造,局所的な自殖,ク
ローン淘汰,などによってばらつきが生じる.イリノイ州中央の7つのD.pul
exの集団では,vwは0.11 (0.05) (()内は標準誤差)と推定された.同じ地
域の9つのD.obtusaの集団でもまったく同じ推定値が得られた一方で,オレ
ゴン州の8つのD.pulicaria の集団では0.15 (0.07) であった.
・チェコスロバキアのD.magna,D.longispia,D.galeata の集団では,6つ
の遺伝子座を用いたHebert et al. (1989) の集中的な調査において,vwの
推定値はそれぞれ0.12 (0.06), 0.13 (0.07), 0.17 (0.10) であった.Benz
ie (1986) の調査はオーストラリアのD.cephalata とD. calinata の集団を
用いていてやや高めのvw−0.16 (0.06) と0.21 (0.07) −を得たのに対して
,Korpelainen (1986a) は0.04 から0.09という値をヨーロッパの4種のミジ
ンコで得ている.これらをひとつのグループと考えると,このデータが示唆
していることは,ミジンコは核遺伝子のレベルにおいてある程度の変異を内
包しており,平均的な個体はタンバク質をコードしている遺伝子座に5% か
ら20% 程度のヘテロ接合していることになる.これらの値はかなり過小推定
になっているかもしれない.なぜならば,タンパク質の電気泳動では実際の
変異の大部分を識別できないからである.この問題を解決するために,研究
はDNA レベルで行われなければならない.
・Hebert (1974a, b) はイギリスのD.magnaの集団の遺伝子頻度の時間的な
変化という興味深い特徴を指摘している.ときどき干上がる池の集団は1年
のうち,そして数年間を通してまあまま安定した遺伝子頻度を示した.その
遺伝子頻度は一般にHardy-Weinberg 期待値によくあっており,配偶子段階
での遺伝子座間の不平衡は観察されなかった.それとは対称に,水がいつで
もある集団での遺伝子頻度は時間と共にどんどん変化し,Hardy-Weinberg
期待値からずれることがしばしばで,配偶子段階では顕著な不平衡を示した
.その観察された変化はそれ自身が定期的に繰り返すというものではなく,
むしろいくつかの優占的な複数遺伝子座の遺伝子型(multilocus genotype
)が年々変化していくというものであった.これらの観察はYoung (1979a,
b) との共同研究であり,似たような結果が干上がらない池のD.pulex の集
団や湖のD.pulicaria の集団でも記録された.
[補足(というより蛇足):遺伝子座間の不平衡(連鎖不平衡)
(例)
対立遺伝子 2つ:Aとa,Bとb.
Aの頻度を0.6,Bの頻度を0.7とすると,
不平衡ではない集団の遺伝子型の頻度は,
AB 0.42
Ab 0.18
aB 0.28
ab 0.12
となる.不平衡な集団では例えば,
AB 0.4
Ab 0.1
aB 0.1
ab 0.4
などとなっており,その(連鎖)不平衡の度合いは,
D = P(AB) P(ab) -P(Ab) P(aB)
= 0.16 -0.01 = 0.15
で計算できる(Dの最大値は0.25,最小値は-0.25).
連鎖不平衡が生じる原因としてはエピスタシスと強い淘汰,あるいは
集団サイズが有限である,があげられる.
]
・繁殖状態での変異というのは,ふたつの異なる環境にいる集団構造のこの
めざましい違いをうまく説明できそうだ.ときどき干上がる環境では,集団
は永続的なものではなく,否応なく1年ごとに有性生殖しなければならない
.ごく短い世代ごとの遺伝子組換えは莫大な数の新しいクローンを年々つく
りだし,成長期間が短いので少数の複数遺伝子座の遺伝子型が増えるように
淘汰されるような時間が十分にはない.他方,いつまでも変化しない環境に
おいては,純粋なクローン繁殖の期間が数十世代以上に伸びる.休眠してい
た卵から新しいクローンの新規加入が継続するならば,この環境では最初は
頻度が小さいクローンが集団中の多数派になる十分な時間がある(Spitze,
1991).いったんクローンの総数が小さく減少してしまうと,配偶子段階で
の不平衡が発生する確率が高くなるだろうし,頻度が増えていく(複数遺伝
子座の)遺伝子型というのは,その時々にもっとも適したクローンがたまた
ま組合わせになるだろう.有性生殖で作られた卵による新規加入の少ない集
団では,複数遺伝子座の遺伝子型には季節的な振動は期待できない.なぜな
ら有性生殖こそが電気泳動のマーカーと淘汰にさらされる形質の遺伝子との
間に新しい結び付きをつくるためである.
・残念ながら,上であらましを述べた全般的なパターンは他のミジンコのta
xaではあてはまらない.たとえば,D.cucullata とD.galeata のいくつかの
大きな湖の集団では遺伝子頻度はまったく時間変化せず,Hardy-Weingberg
期待値から有意にずれていない(Mort and Wolf 1985, 1986).そうかと思
えば,フィンランドの岩間の水たまりのD.magna とD.pulex の集団では遺伝
子頻度が時間的に大きく変化することが特徴である(Korpelainen 1986 b,
c).額面どおり受け取るなら,これらの食い違いはHebert の仮説と矛盾し
ているが,この仮説を排除するものではない.大きな湖ではオスと耐久性の
(有性生殖をする)メスがまれであることから有性生殖はふつう行われない
と思うかもしれない.しかしながら,湖全体では十分に有性生殖しているの
で(Hebert が調べた)大きく変動するするD.magna の集団によく似た状態
を維持している,と考えるのは可能である.さらにKorperlanian の調べた
岩間の水たまりにおいてでも,有性生殖によって毎年の新規加入する個体の
数がたいへん低い,ということも考えられる.もしそうであるなら,比較的
短い成育期間のもとでさえも配偶子段階における著しい不平衡が生じるかも
しれない.
[第2回 960913]
[これまでのあらすじ]
過去20年間以上にわたりミジンコ(Daphnia)の進化遺伝学を追及してき
たMichael Lynch 博士とその一党は,その莫大な成果の一端をいまやここに
まとめるに至った.ミジンコの繁殖様式は基本的に単為生殖(小田重人氏(
筑波大)談:おそらくはapomictic parthenogenesisでしょう)であり,池
の水が枯れたりするときには有性生殖を行って,耐久卵をつくり劣悪な環境
を乗り越える.Hebert (1974) の先駆的な研究以来,アイソザイムを用いて
,集団内・集団間の遺伝的多様性を測定する仕事が多数なされた.Hebert
はいつでも水のある池と毎年水がかれる池では,ミジンコの遺伝学的な集団
構造が異なることを発見した.このような違いは有性生殖の頻度でうまく説
明できそうだ.しかしながら,別の集団で調査してみるとHebert のいうパ
ターンは見つからないことも結構あった.ミジンコの遺伝学的な集団構造(
ヘテロ接合度・連鎖非平衡など)がどうやって決まっているのは結局はよく
わからない.
[分子レベルの進化]
(承前 p.112から)
・同種のミジンコの複数の集団からアイソザイム頻度が得られれば,全体の
遺伝的多様度を集団内の違い(vw)と集団間のそれ(vb)に分割できる.vbは
集団間に期待される遺伝的多様度であり(ランダム交配を仮定したときのヘ
テロ接合度),集団内より大きな値になると期待される.その指標は,
Gst = vb /(vw +vb )
集団の分断の度合いのよい指標である(genetic differentiation Gstは0か
ら1の値をとる).
・私たちのD. pulex, D. pulicaria, D. obtusa の調査では,Gst はそれぞ
れ,0.18 (0.07), 0.31 (0.08), 0.29 (0.05) であった.これらの結果は,
D. pulex においては集団の分断の度合いが異常に低い,ことを示している
わけではない.というのは,この種に関しては80kmも離れていない池で調査
したのに対して,D.pulicaria とD.obtusa はそれぞれ240km と560km 離れ
た場所を調べたためである.原理的には,Gstは「距離による隔離」仮説と
は矛盾しない.実際,D.pulex の1000km以上離れた集団で調べたところ(Cre
ase et al. 1990),Gst が1km 離れるごとに0.05ずつ増加している(0.3に
近づく).Korpelainen (1984) もD.magnaに「距離による隔離」関係を観察
した.図6.1はミジンコの多くの種の調査の結果をまとめている.図に無視
できないノイズも示されているが,一般にGst は距離とともににゆっくり上
昇していくように見える.
・もしアレルの変異がほとんど中立であることが示されたなら,アイソザイ
ムの頻度に関する空間的・時間的な変異に関するデータから,集団の有効な
大きさや移動分散率などの集団構造が推定できるだろう.このような解析は
今やふつうにやられていることであるのに,ほとんどの場合ではアイソザイ
ム変異にかかる淘汰に関しては無視できるものとして取り扱われる.ミジン
コの調査の結果の多くには長期間(8年ものもある)の時系列データも含ま
れているので,アイソザイムを中立と見なして良いかどうか統計的に評価で
きる(Lynch 1987).このように調べてみると,多くのアイソザイム変異は
「準」中立(quasineutral)であった.淘汰係数の長期間平均がゼロから有
意にずれていたアイソザイムは見つからなかったが,特定の日時ではアレル
の頻度が期待値からサンプリングの誤差を越えて期待値からずれている場合
もあった.これらのデータは,このアイソザイム変異にとって有利な期間と
不利な期間が大体のところで釣り合っていると示している.つまりこの変異
は長期的には中立,短期的には中立ではない.
・こういった変動淘汰(fluctuating selection)がランダムドリフトみた
いな挙動を示すのは昔からよく知られていて(Wright 1948; Kimura 1954)
[蛇足 必ずしもランダムドリフトのようにはならない,とくに相関のある
環境変動下では],これが原因となって,隔離された集団間の遺伝子頻度が
(中立な環境下で期待されるより素早く)ばらばらになり,さらに各集団内
で維持されているヘテロ接合度にも影響する.以上のことから,ミジンコの
集団の特性を推定するためにアイソザイム変異を用いるには十分に注意しな
ければならない.
・Lynch(1974) の淘汰に関する解析は,以前には謎だとされていた観察にも
洞察を与えた.例えば,Hebert (1974a)のミジンコの永久調査区では,ほ
んの数メートル離れただけで,遺伝子頻度が劇的に変化することがよくあり
,その一方で,もっと距離が離れるた,MortとWolf (1985, 1986) の湖の集
団などでは遺伝子頻度に関してずっと均一である.なぜこういう違いが生じ
るのだろうか.淘汰様式の違いで説明できそうだ.D.magna の集団ではアレ
ル変異の淘汰係数の分散が比較的大きく,一方,Mort とWolf の大きな湖で
は分散がほとんどなかった.これらふたつの集団で観察された遺伝子頻度の
地理的構造の違いは,淘汰強度の振動の違いに基づいて定性的には説明でき
そうだ.これまでのところ,アレルマーカーそれ自身が淘汰されているとい
う証拠はない.それよりありそうなのは,上述したように,有性生殖の発現
率のような集団構造の特性がマーカーと実際に適応度に関わる他の遺伝子座
の間に相関を作り出しているのだろう.多分,(証拠はないが)クローン淘
汰に反応して生じた配偶子段階での連鎖非平衡になって,その結果,ミジン
コの中でもよく有性生殖を行っている種において,アイソザイム変異に対す
る淘汰が普通ではないくらい高くなっているのだろう.
・制限遺伝子座のマッピングを用いることで,D.pulex の集団遺伝学的な構
造に関する仕事をミトコンドリアDNAを用いたものに拡張している(Crease
et al. 1990).集団内では,平均核酸多様度(average nucleotide divers
ity)は約0.002であった.言い換えるなら,あるひとつの集団からサンプル
したふたつのミトコンドリアは約0.2%異なるということだ.他の集団でも,
この統計量は0.05%から0.5%の間に収まっていた(Lynch and Crease, 1990
).したがって,D.pulex はこの中では特に変わっているわけではない.し
かしながら,集団間レベルもこの手法で解析すると,このD.pulex はミトコ
ンドリアDNAに関してはもっとも分断が進行した分類群であることがわかっ
た.
・われわれは核酸レベルでの集団の分断の度合いを測る指標としてNstを用
いた.これは,Gst のようにゼロから1までの値をとる量である.集団間の
距離が1km未満であるとき,Nst の値は0.2ぐらいになり,100-1000km離れた
集団離れた集団ではだいたい0.7kmに漸近する.後者の値は,新世界全体の
キイロショウジョウバエの集団より大きな値である(Lynch and Crease 19
90).
・D.pulex のミトコンドリア遺伝子レベルでの地理的分化の度合いは,核遺
伝子のそれよりもだいたい3倍である.このような対応関係は,理論的に導
かれる期待値にもあっている.ミトコンドリア遺伝子に関しては,有効な集
団の大きさが4分の1しかないので,近似的に4倍ほど遺伝的浮動がおこりや
すい.しかしながら,アイソザイム頻度が集団間でばらばらになる速度は,
(環境変動がある場合には)ランダムドリフトだけから期待されるより早い
ことを思い出してほしい.このことは多分,ミトコンドリアでの変異にも成
り立っているだろう.というのも,ミトコンドリアでもまったく同じランダ
ムな過程にしたがっていて,それが淘汰にさらされる量的遺伝を伴う連鎖非
平衡を作り出すためである.
・最近,多重遺伝子族−−−18sと28sのリボソームDNAに関して上のような
解析をおこなった(Crease and Lynch 1991).D.pulex から分離された90
のクローンだけの間で,37の全く異なる繰り返しタイプが見つかった.集団
ごとに,個体は最小である2から4の繰り返しタイプを持っていた.集団内で
のランダムな繰り返しの平均核酸多様度はだいたい0.003であり,これはミ
トコンドリアのゲノムで観察されているものより少し大きい.そして集団の
分断の度合いは,核遺伝子の繰り返し配列ではない部分(アイソザイム)で
観察されたレベルより少し小さい.これらの結果は驚くべきものであった.
つまりこれらが示唆しているのは;単離された集団に多くのうちひとつの繰
り返しタイプを固定させる間に,遺伝子を均一化させるような力−例えば遺
伝子置換(gene conversion)・不等交叉(unequal crossing-over)・複製
のずれ(replication slippage)など集団内の多重遺伝子族の多様性を減ら
している(Dover 1982; Ohta and Dover 1984).もしこれが本当なら,多
重遺伝子族のNstは繰り返し部分でないところにくらべて大きいはずだ.
・調べている3つの種の間の系統的な関係を比較するために,すべての集団
の組み合わせについて根井の遺伝的距離Dを計算した.この統計量は,ふた
つの集団または種からランダムにサンプルしたふたつの遺伝子に生じた置換
数の期待値である.中立なマーカーでは,Dは時間とともに単調に増大する
,###.複数の集団が移動分散を通じてつながると,ドリフト・突然変異・
移住のバランスから期待される平衡状態に近づいていく(Slatkin, 第1章)
.
・図6.2で示した系統樹では,D. obtusaからD. pulex - D. pulicaria の間
の距離はD. pulex - D. pulicaria 間の距離のほぼ5倍である.ほとんどの
部分では,集団間の距離は系統群間の距離より短い.しかしながら,衝撃的
な例外がいくつかあって,種内の距離と種間の距離は連続的に分布している
ことである.たとえば,インディアナのD.pulex (図ではPA)の集団は,地
理的にはイリノイの5つの集団にたいへん近いのに,系統樹でははっきり分
かれている.オレゴンの集団(図ではAMZ)は形態的にはD.pulex に近いの
にD.pulex-pulicariaのアウトグループになっている.
・D.pulexとD.obtusaはアイソザイム遺伝子座あたり約1個の置換によって分
離されているのだが,これらの種は人工的にハイブリッドを作ることができ
る.しかしながら,このようにして作った子孫は繁殖できない.一方で,D.
pulexとD.pulicariaは交雑受精(cross fetilization)ができる.広範にわ
たるアイソザイムとミトコンドリアDNAからわかったことには,このような
ハイブリダイゼーションの結果,カナダからアメリカ中西部にかけて単為生
殖しか出来ないクローン(obligately partheno-genetic clones)が生じて
いることがわかった(Crease et al. 1989, 1990; Hebert et al 1989a).
・他にもミジンコの交雑は知られている###(色々なミジンコ)###.これら
それぞれの場合で,親集団とクローン集団の遺伝的距離は0.3から0.4であっ
た.このように0.4かそこらである遺伝的距離は,しっかりと確立した(有
性生殖をやっている)ミジンコ種間の生殖的隔離より上回っているはずだ.
このような分化には多くの時間が必要なはずである.Nei (1987)の経験的な
データによれば,(分化時間(年))=5×100万×Dであり,ミジンコの生
殖隔離には少なくとも200-300万年かかっていたことになる.
[生活史の進化]
.遺伝的多様性は量的形質のレベルにおいていくつかの方法で特徴づけられ
ている.集団内では,クローン間の遺伝的な違いに由来する全体の形質の分
散の割合が「広義の遺伝率」(broad-sense heritability)として知られて
おり,これは,
(全遺伝分散)
H^2 = -------------------------
(全遺伝分散)+(環境分散)
である.
・ミジンコで遺伝率H^2を推定しようとする全体的なアプローチは以下のよ
うなものである;ある集団からランダムにいくつかのクローンを選び,その
後に研究室の管理された環境下で育てる.解析に先だって,それぞれのクロ
ーンは2つかそれより多いサブ系列にわけて2-3世代育てた.この操作は,最
後の解析において,物質的影響または/かつ容器の影響が分散に及ばないよ
うに保険をかけている.これらの効果は遺伝的分散を過大推定させる.この
実験の結果はひとつかそれ以上のそれぞれのサブ系列から複数の個体になさ
れた.この個体のすべてはひとつのenvironmental chamber でrandomized d
esign で維持されていた.ここで報告する研究では,20度Cに維持され12:12
の明暗環境でありエサ(green algae)は飽和状態に集団をおいた.The gen
etic and environmental components of variance were obtained by equat
ing the mean squares of an analysis of variance to their expectation
s. 詳しくはLynch (1985) とLynch et al. (1984)を見よ.
・表6.1ではD.pulex, D."amazon", D.obutusaで得られた遺伝率の推定値を
示している.これらの集団は毎年水の枯れる池から春の早い時期に採集され
たクローンであり,卵から返ってすぐのものである(D.obutusa の遺伝率に
は,同時に測定した8つの集団の結果をまとめたものである).これらの集
団において,サイズ・成長・繁殖のほとんどの形質は0.2から0.8の間に分布
していた(有意に).少し異なる手法で,また別の水が干上がる池のD.pule
x の集団を以前研究したときに,定性的には似たような結果が得られた.(
Lynch 1984).
・今度は同じような処置を,D.pulexの集団から作られた「無性生殖しかで
きない」(obligate parthenogenesis)ことがわかっている集団に対してほ
どこしてみた.この実験は上述の実験と同等のものであったが,これら20の
生活史形質の中で遺伝率を有意に検出しうるものはひとつもなかった(Lync
h et al. 1989).他にも同じような結果を得ていることがあって,周期的
な無性生殖集団(cyclically parthenogenetic population)を調べる時機
が成長期の終わりのほうに近づくにしたがって,その数週間前に同じ池で測
定した遺伝率に比べて,どの値もかなり減少していた(Lynch 1984b).こ
れらふたつの観察から,長期にわたるクローン淘汰は集団から生活史の形質
に関する遺伝的な分散のほとんどを消滅させるのにたいへん有効である,と
いう考えが正しいように思える.この仮説は,クローン集団ごとにことなる
電気泳動のマーカをつけて調べる室内実験からも支持されている(Spitze 1
991).
・私たちが調べたD.puricarila の集団はオレゴン州カスケード山脈中の水
がかれることない大きな湖にすんでいて,個体はwater column で越冬して
いるみたいだった.この解析もまた上と同じようにサイズとデザインを設定
して解析を行ない,まだふたつの集団だけが調べられていて(Hosmer湖とOs
mer湖),それぞれひとつだけ有意な遺伝率を検出できた(Table 6.1).休
眠卵からの新規加入がほとんどないままクローン淘汰が長く続くと,このよ
うな集団では量的遺伝変異が少なくなるようだ.これは「無性生殖しかでき
ない」集団のおかれている状態に似ている.どちらの集団でも,Hardy-Wein
berg平衡と配偶子における電気泳動マーカの平衡状態からの有意なずれを示
し,このことは最近の有性生殖による新規加入がなかったという予想と矛盾
していない.興味深いことに,Klamath 湖から得られたD.pulicaria の3番
目の集団は,生活史形質に関する遺伝的変異を相当に内包している(table
6.1).Hosmer 湖やOdell 湖の集団とは異なり,この集団はHardy-Weinberg
平衡にあり,このことはこの集団が最近有性生殖を行ったと示唆している.
・このような「種」のレベルでは,全遺伝子変異は,集団内・集団間の変異
に分割できる.全遺伝子変異のうち集団間の違いに寄与している割合をQst
とする(分子レベルで考えていたGst とNst に対応するもの).遺伝子や塩
基の多様性の尺度にくらべて,Qstはちょっと違う形式である.相加遺伝分
散にもとづく量的な遺伝子の形質に関して,Wright (1951)は 集団内の相加
遺伝分散の平均値がE[(sigma_GW)^2] = (1 -Qst) (sigma_G)^2 となること
を示した(sigma_G は,もしすべての集団がランダム交配によって,ある「
汎生殖の単位」(panmictic unit)として結合されているときの相加遺伝分
散).集団間で期待される分散は(sigma_GB)^2 = 2 Qst (sigma_G)^2 であ
る.つまり,
Qst = (sigma_GB)^2 / (2 E[(sigma_GW)^2] +(sigma_GB)^2),
が成立する.倍数体の種における相加遺伝子できまる形質に関するQstと,
量的遺伝子座の遺伝子頻度を使ってGst を計算できるなら,このふたつは一
致する.E[(sigma_GW)^2 の前にある2はQst が遺伝子型を比較していること
に由来する(Gst やNst は遺伝子を比較している).すなわち,わかれたそ
れぞれの集団の中の個体内で遺伝子が同じであるという統計的な相関によっ
て,量的形質に関する集団間の分散は大きくなる.
・D.obutusaの研究は8 コの集団に基づくものなので,生活史形質に関するQ
st を推定することができた.すべてに形質に関して,集団間に有意な違い
があり,これは集団内の分散が無視できるような形質に関しても違いがみら
れた(table 6.1).注目すべきは,これらQst の平均値は0.29 (0.06) で
あり,この値はこの種のミジンコのアイソザイムから得られたGst と同じ,
という点である.前の方で注記しているように,ミジンコにおいてアイソザ
イム頻度の分岐(divergence)は変動淘汰(fluctuating selection)によ
って中立な変動(ドリフト)よりも大きくなるので,上のような結果は形質
の平均値の集団間に見られる違いにも,環境変動が同じような役割を果たし
ているのかもしれない.このことは,ミシガン州のいくつかの湖のD.pulica
ria とD.galeata の集団を調べた最近の結果からも支持されている.このLe
ibold とTessier の結果(1991)を用いると,Qst はそれぞれ0.46 (0.05)
と0.61 (0.24) と推定された.ふたたびfig.6.1 (これは広い地域に関して
報告されたものである)を用いてGst を推定して比較してみると,集団分断
に関する上の量はかなり大きいことがわかる.Leibold and Tessier (1991)
は,ミジンコの脊椎動物の捕食者に対する局地的な適応の結果として分岐
が生じたことを信じざるを得ないような証拠を示した.
.それぞれの形質に関してLynch の分岐の統計量,
delta = (sigma_GB)^2 /T /(sigma_E)^2
(T はふたつの種が分岐してからの合計世代数)による集団遺伝学的な文脈
で,上で観察された種間の分岐を調べてみた.中立な期待値との関係から,
delta は便利である.自然淘汰がないときには,分離した系統群での形質の
平均値間の平均は一世代あたり2 (sigma_m)^2 で増大していく((sigma_m)^
2 は突然変異によって世代あたり集団に新しい変異が生じる速度である,第
5章参照).上の(sigma_E)^2 は形質に関する環境分散なので,(sigma_m)^
2 /(sigma_E)^2 の推定値は,ミジンコを含む多くの種の様々な形質で10^-2
から10^-4 に分布している(Lynch 1985, 1988).したがって,観察され
たdelta が2x10^-4 より小さいことは先ほどの仮説と矛盾していない.つま
り,もしランダムドリフトと突然変異が唯一の進化の原動力である場合と同
じような速度で形質の平均値がばらばらになることを自然淘汰は妨げている
.
・D.pulex とD.pulicaria は生殖的には完全に分離されているわけではなく
,そしてDaphnia "amazon" の系統関係がはっきりわからないので,ここで
はD.obutusa とD.pulex/puricalrua の間にある違いだけを考えることにし
よう(後者のふたつについては,これらの平均値を用いる).これらの種が
年に4 世代であると仮定すると,figure 6.2 から遺伝的距離を推定すると
,D.obutusa とD.pulex/puricalrua が分岐したのはだいたいのところT = 2
.7 x10^7 世代前の過去のことである.Table 6.2 に示されたdelta の推定
値は,サンプリング誤差を除いた(sigma_GB)^2 の推定値の平均値の平方誤
差の半分にしたものから得られた.それぞれの形質に関して,環境分散は全
集団・全種の分散からクローン内分散の平均値を差し引いて得られた.
・これら7つの形質をすべて平均すると,delta の平均値は5.5 (4.4) x10^-
9 となり,これは中立な場合の最小の期待値と比較してもおおざっぱにいっ
て5けたも違っている.このように進化の速度が極端に低いことは,ミジン
コの種間でサイズ・成長率・繁殖に関する形質の分化をさまたけげるような
強い安定化淘汰が働いていることを強く示唆している.同種内では集団内と
集団間のそれぞれで遺伝分散が高いレベルにあって,このことは局地的な選
択圧による速やかな分岐があったことを示している一方で,上で示したよう
に,種分化が起こった後の相加的な分岐(additional divergence )は相対
的に低い.
・プランクトン性のミジンコ目(planktonic cladocerans)では,個体の体
サイズが生態学的および進化生物学的な特性を基本的に決めているものだと
考えられ続けている.サイズにかかる自然淘汰が他の生活史形質の進化に及
ぼしていると期待されている影響の度合いを評価するために,成熟したとき
の体長(Lk-1)とtable 6.1 の他の形質の間の遺伝的な相関を計算してみた
.形質間の遺伝共分散を推定したやり方は,分散のコンポーネント推定にか
んする一変量操作(?univariate procedure )に似たものである−−つま
りある多変量解析の交叉積(?cross-products)がそれらの期待値に等しい
としている.分離したアレルの多面発現効果もしくは異なる遺伝子座におけ
る配偶子段階での連鎖不平衡の間に生じる違いによって,遺伝子レベルでの
有意な相関があればその形質は独立に自由に進化できないことを意味する.
・私たちが観察したほとんどの集団では,成熟時のサイズは誕生時のサイズ
・幼生段階での成長率・クラッチサイズと遺伝的に正の相関があり,最初の
繁殖開始齢とは負の遺伝的相関があった(table 6.3).一方で,成熟個体
のサイズと成長率の間の遺伝的相関は進化的な可変性を示した;すなわちD.
obutusaでは有意に正であるのに対して,ポートランドアーチから得られたD
.pulex の集団では有意に負であった.D.obutusa に関しては,集団間のレ
ベルにおける遺伝的な相関を計算することもできる.これらは集団内推定か
ら得られた値と定性的には矛盾がない(table 6.3).
・これらの結果は,D.pulex のいくつかの生活史形質の遺伝共分散に関して
広範な研究から得られた結論を支持する者である−すなわち,普通には期待
されていること(Travis,この本の第9章)に反して,ミジンコでは生活史
の形質に関する遺伝的なトレードオフはほとんど見つからなかった.
[議論]
・ミジンコの量的な変異の研究から現れたパターンとは,毎年定期的に有性
生殖を続けている集団にかんしては,生活史形質の遺伝的な変異は成長シー
ズンのはじめでははっきりしていたのに対して,わずかその数週間後にはは
っきりしなくなる,というものである.遺伝変異の周期は1年である(Lynch
1984b).これらの観察は,安定化淘汰のもとでの季節的な無性生殖をして
いる集団における量的形質の表現型の進化モデル(Lynch and Gabriel 1983
)から得られた予測によくあっている.クローン淘汰は逸脱した突然変異を
十分に抹消してくれるので,発現される遺伝分散がすぐに減ってしまう.し
かしながら,表現型の特性と遺伝子型は切り離されているので(?),遺伝
子型とはかかわりなく,クローン淘汰の期間を通じて「隠れた遺伝分散」(
hidden genetic variance)が増えていくことになる.ポリジーン形質に関
しては,多くの異なる遺伝子型から同じ表現形が得られる.原理的には,こ
のようにある集団にとって表現形レベルでは何の変異もないが分子レベルで
はかなりの変異が存在する,ということはありうる.量的遺伝変異が急速に
失われている期間に,アイソザイムレベルにおける遺伝子型頻度(これはHa
rdy-Weinberg 期待値に近い)が比較的安定していることを観測している.
これは集団の中に多くの生態学的には等価なクローンが少なくとも時間的に
ある程度の期間は存在する,というアイデアが正しいことを確認するもので
ある(Lynch 1984 a, b).
・無性生殖で集団が増殖している限り,隠れた遺伝分散のプールは,成長し
続けるという事実があるにもかかわらず,進化的には不活性である.しかし
ながら,たった一回の有性生殖は,隠された遺伝分散の大部分を発現された
形に変換するのに十分である(Lynch and Gabriel 1983).このように,長
期間にわたって有性生殖をやっていない集団では発現される遺伝分散がかな
り高いレベルに到達すると期待され,そしてそれゆえに,有性生殖だけやっ
ている集団より,より高い短い短期間の進化的な潜在力を持つ(?).
・もし広くいきわたっている淘汰の様式が多様化もしくは十分に上に凸にな
った適応度関数による方向性のあるものであるなら,上で枠組みを述べた結
果は,部分的に変わるだろう.このような条件のもとでは,クローン淘汰は
よい遺伝子の組み合わせにとって有利に働くであろう.分離と組み替えはこ
のような正の相関を失わせるならば,できたばかりのクローン間にみられる
遺伝的変異は親の間に見られたものより小さくなるだろう.このような変化
がD. "amazon"の集団において記載されている(Lynch and Deng, in prep)
.
・ある特定の条件のもとで,有性生殖で子供を作る新規加入は量的形質の平
均値だけでなく分散も変えることになり,ある年の終わりから次の年の始め
にかけてgenetic slippage を引き起こす.もし成長シーズンの始めで遺伝
的分散がぱっと増えたなら,それは過去数年間に作られた休眠卵から孵化し
ていることの帰結である.そのよい証拠として,いつでも水のある湖の沈殿
物にミジンコ目の「シードバンク」(seed bank)が見つかっている.この
ように,もし,淘汰の働きによって変異が増加する一方で,年によって異な
る形質が有利になる生態学的な条件にあるならば,いろいろな年齢の休眠卵
のコホートからの新規加入が,その前の年に形成された淘汰による変化(se
lective progress)を無視できないほど損なうことはありそうだ.
・実証的かつ理論的の両方のレベルで分析されるべき第二の問題は,非相加
的な遺伝子の振舞いが形質の平均値と分散への寄与を取り扱えるような拡張
である.上述したように,クローン淘汰は個体の遺伝子型に由来する特性の
すべてに作用するにもかかわらず,有性生殖をする集団での淘汰はそれらの
相加的な効果が有利であるようなアレルを増やしている.淘汰によって無視
できない非相加的な遺伝子の組み合わせが有利になったならば,有性生殖を
行うときに組み換えによる崩壊が生じるだろう.このように,遺伝子の働き
方の様式に依存して,長期にわたるクローン選択は共適応的な遺伝子複合体
(coadapted gene complex)の進化を促進し,有性生殖をするときに外交配
弱勢(outbreeding depression)に従うだろう(?).ミジンコでは近郊弱
勢(inbreeding depression)を示しており,これは純粋な相加遺伝子では
不可能なので,この問題に対するさらなる開拓が必要であることの正当な理
由となっている.最近,D."amazon" の集団では.生活史形質に関する平均
値が形質値の標準偏差から約10%のgenetic slippage を観察している(?)
.今後の仕事では,無性生殖の期間の長さとともにgenetic slippage の強
さがどれほどになっているかを評価し,クローナル期間における方向性のあ
る淘汰に対する反応をgenetic slippage がどれほど壊してしまうかを決定
する必要がある.
・これまで,私たちの結果は同種の異なる集団の遺伝的な構成(遺伝率と遺
伝相関)が定性的には似ていることを示している(Spitze et al. 1991).
この結論は,別種の遺伝相関を調べたときにもほとんどそのまま成立してお
り,別種に対する同一の淘汰圧は定性的には似たように働くと示唆している
.私たちが調べた形質のひとそろいは協調的な様相で進化していて,成熟個
体の成長率はその例外と言えそうである.このような平行しているパターン
が,淘汰のうえで有利になるような特定の資源分配様式に影響するような完
全な組み合わせが至るところに似たような多面発現の帰結をもたらせている
のかどうかは,まだわかっていない.
・ひとつ共通して観察されているのは,同種の集団間で微小進化がすぐに違
ってくるのに,系統群が確立した年齢とともに形質の発散する速度が次第に
遅くなることである.私たちの結果はこのパターンとよく一致している.あ
る集団は量的形質に関する幅広い遺伝的変異もっていて,これは隔離した集
団間での発散の程度が高くなることを可能にしている.しかしながら,種間
での生活史の特性の進化的な変化はそれぞれの種の進化的な潜在力(evolut
ionary potential )であるかのように見える.私たちが調べた種間の生活
史形質の発散を促進することに,生殖的な隔離は本質的は何も貢献していな
い.
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