Subject: [stats:622] R のマニュアルの日本語化について To: stats@ism.ac.jp Date: Sun, 06 May 2001 14:00:00 +0900 Stats (そして R-jp) の皆さん、東工大の間瀬です。統計処理言語 R のマニュアル類の日本語化に関するお知らせです。 既にご存知の方も多いと思いますが、R はベル研で開発された統 計処理言語 S の完全フリー版(命名は S の一歩手前ということで しょうか)で、フリーソフトの本家であるいわゆる GNU プロジェク トの一つです。S-clone, GNUS-S, poorman's S 等の別名で呼ばれるこ ともあります。 R は最初ニュージーランドのオークランド大学の研究者達により開 発され、その後完全にフリーソフト化されたため、現在は全世界の 良く組織された多数のボランティアチームにより精力的な開発が行 われています。S の開発者の一人であるかの Chambers や、フリー の統計処理言語の老舗 Xlisp-stat の開発者も現在 R の開発チームに 参加しています。R は最初 Unix 用に開発されましたが、現在は様々 な WS 用の Unix は勿論、Linux 等の PC-Unix は勿論、(B.D. Ripley 等 を中心に) Windows にも移植されています。Mac 用の開発は一時中断 していたようですが、現在又移植作業が再開されているようです。 現在のバージョンは 1.2.3 で既に 1.3 に向けて開発が進んでいるよ うです。R は S とは全く独立に開発されていますが、最初から言語 仕様をできる限り S に似せることを主目標としており、実際開発チ ームの一人によれば S (及び S-Plus)で書かれたプログラムのほぼ 95% は全く変更無しに R で動作するそうです。またバージョン 1.1 からは制限付きですが相当数の日本語フォントも扱えるようになっ ています(但し入力は漢字コードを用います)。 先に R のマニュアル類を日本語化しようという話が一般ユーザーか ら起こり(そのためのメイリングリスト R-jp が作られました)、既に 基本使用マニュアル R-intro が翻訳されていましたが、 今回もう一 つのマニュアル R-exts (R の新規パッケージの作り方、ドキュメント の書き方、そして C や FORTRAN とのインタフェイス等が解説されて います)の翻訳が完成しました。御関心のある方はホームページ(今週 中に upload される予定で、今後も改訂の度に随時更新されます) http://www.is.titech.ac.jp/~mase/ を御覧ください。これらのマニュアルは texinfo と呼ばれる計算機 マニュアル用に特化した TeX の方言で書かれており、現在日本語訳 ソースとコンパイルした DVI ファイルが置いてあります。PDF 版も いずれ(何時?)準備する予定です。これらはオリジナルと全く同じ条 件のもとに自由に配布、改変が可能です。またこのホームページには R のヘルプドキュメントの html 版の翻訳も置いてあります。但し、 全部で約 500 近くあるバージョン 1.2 のヘルプドキュメントの内、 現在翻訳が済んでいるものは約半分です。 R が今後の統計処理パッケージの中心、統計利用者の共通背景になる ことはまずまちがいないと思われます。R 自身のホームページ (CRAN) http://www.ci.tuwien.ac.at/R/ には R 自身と様々な貢献パッケージが置いてあります。(いくつかは ある統計の本で解説された手法とデータを著者自ら R プログラム化し、 読者が技法を容易に実地に自分で試すことができるようにしたパッケ ージで、こうしたやり方は今後統計学の本の一つの標準になるのでは ないでしょうか。) また r-help と呼ばれる全世界のユーザーのメイリ ングリストがあり活発な議論が行われています。是非日本からも有用 な貢献パッケージが多数誕生することを期待(自身で開発された有用な 手法を全世界に広める一番効果的な手段は R のパッケージ化すること でしょう)していますが、一方で特に日本の一般ユーザー(そして英語が 苦手な学生)のためにはマニュアル類の日本語訳が不可欠と考えます。 志のある方のこの作業への参加を期待します(R の開発のスピードは目 を見張るものがあり、マニュアル類の翻訳も終わりのない恒常的作業 になりそうです)。広範囲な統計分野(そして計算機に関する雑多な知 識)をカバーするため、翻訳者にも意味不明なまま、とりあえず適当に 訳している所が多々あります(それでも無いよりははるかにましと、と りあえず考えています -> GNU 精神に則り absolutely no warranty です)。 こうした日本"誤"訳に関する専門家各位からの御教示も期待しており ます。 以上お知らせまで。 PS. 噂では S の伝導者である慶応大学の柴田里程研究室も最近 S から R に全面的に切替えたそうです。 Shibata の S から Ritei の R へ :-) =========================================================================== 間瀬 茂 東京工業大学 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1, 西八W-806号室 電話&ファックス 03-5734-3877 (ISDN回線) ===========================================================================